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離 Ⅱ
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連れて来られたんは、第二会議室やった。
「コレが一昨日の企画会議で決定した全部や。」
ドンと置かれたレジュメは、分厚い束が3つもある。
「うわっ!!こんなにあるんか?」
「ああ、コンビニとの飲料と夏向けの菓子の共同開発やからな、半分は契約書やら、なんやらアッチ側の資料やから、まぁ、大丈夫やろ。」
そこで、須永は一旦言葉を切ると、小声になった。
「ところで。莉緒ちゃんの具合、ようなったんか?」
「ま。…まぁ、おかげさんで、一応ちょっと持ち直した、かな?」
ナニが何やら解らへん。けど、取り敢えず、静直伝のウソやない作戦で、いってみた。
「一昨日。急遽休みのおまえを呼ばなアカンてなってんけどな、スマホが通じんかったから、試しに家電へかけてみたんや。そしたら、…電話口に誰が出た思う?」
―だ、誰や?
緊張に、思わず喉が鳴った。
「それがな。悠真くんや。」
「えっ?あの子がか!?」
―いつの間にか、電話に背が届くようになってたんか?
「今、お父さんは出かけてます。お母さんは、お腹が痛くて、寝てます。何か伝言があったら、ボクが伝えます。ってな、小さい声やったけど、ハキハキ喋ってたで。」
「は、はぁ…そんな事があったんか。」
「なんや、おまえ知らんかったんか?買い物から帰ったら、悠真くんから聞いとると思ったのになぁ。」
どうやら、須永の頭の中では、莉緒が寝込んだから、オレが代わりに買い物に出ていて居なかった、と思っとるらしい。
「ああ。そんな話は今、初めて聞いたような気がする。」
「まさか、そんなハズないやろ!?…フッ。そっか~。やっぱり、莉緒ちゃんの存在はそんだけ、デカかったってことやな!良かったな、早目に分かって。これで俺も、おまえのピンチヒッターになった甲斐が、あったゆうもんや。」
須永は満足そうに何度も頷いて、ニヤニヤし始めた。
「あ、あぁ…。色々と済まんかったな。」
一応は、礼を言うといた。
「お疲れ様でした、和泉さん。」
いきなり花束を持った新人がやって来た。
「本当に。今までよくやってくれたな。」
ハゲの部長が肩を叩いた。
「意外と真面目だったから、楽させて貰えたよ。」
―意外と?
「たまに出る鋭いツッコミ、あれサイコーでした。」
―は?
いつ、そんなこと言った!?
「奥さんとの遠距離、頑張れよ!」
―頑張るんは、仕事とちゃうんかい!?
皆から色々激励(?)を受けてから、オレは会社を出て駅へ向かった。
―それにしても。
おとついって。
つまりは、その…。
まさか、オレが静と会ってアレコレしとる間に、莉緒がそんなことになっとったとか
それを我が子がフォロー(?)して
またあの須永が、良いように勘違いしてくれてたやなんて…。
今日まで全く知らんかったんかったし。
どんだけミラクルやったんや、オレ!?
たぶん、コレで一生分の運を使い果たしたな、と思いながら、新幹線に乗った。
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