アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
声
-
転勤して、四日目の明け方。
『…和泉。』
なんでかオレは、静の声で目が覚めた。
「ん…、ぁいたたっ。」
殺人現場の死体みたいに俯せで寝てたせいか、えらい首が痛い。
「…せ、い、?」
『今日は何月何日だ?』
―へ?
ええっと。
たしか昨日が、お雛さんやったから…
「たぶん、4日やな。」
痛む首をさすりながら、ぼんやり答えた。
『…あれから何日経ったと思っている?』
「んっ?」
オレは、ぶっ倒れとった床の上から、ようやっと身を起こして、片手で左だけ履いとった靴を脱いだ。
「どないしたんや、静?何かあったんか?」
半分しか開かん目で靴の先を見ながら、そう訊いた。
『それは、こちらのセリフだ!』
珍しく、静が声を荒げたことに驚いたオレは、慌てて立ち上がった。
「ち、ちょっとだけ待ってな。今、水飲んでシャキッとするから。」
『だったら、飲みながら聞け。この数日、何をしていたかなど、どうでもいい。だが、おまえは俺に約束した筈だ。』
「あ…。」
―そうやった。
連絡する、言うて、もう4日も…
「あ、あのなっ」
「もういい。」
―えっ?
バシャッ
手から落ちたボトルから、床に水が溢れた。
「出来ない約束など、二度とするな。」
「ご、ごめ、、…えぇっ?…せい!?」
オレが謝る途中で、スマホの電源を落としてしもたらしい。
すぐ後から何べん電話してみても、静にはいっぺんも繋がらへんかった。
―どないしよ?
のろのろと、落としたボトルを拾ろた。
タオルでしっかり拭き取った床の水溜まりとは逆に
ドロドロと不安が押し寄せて、頭を埋め尽くす。
―『約束を破る人間は好きじゃない。』
いつやったか、言われた言葉に、今さら胸を抉られた。
―嫌わ、れた?
このまま、音信不通、とか。
もう、2度と逢うてもらわれへん…?
何年後かに、どっかの街で偶然すれ違うても、知らんぷりされる、…とか。
たぶんその時には、静は別な相手と…。
―あああ!!
ちゃうやろ!
今はヘタレとる場合やない。
何でも、失敗した後が肝心やって、昨日会うたFマートの青木課長も言うてはったやないか。
一旦冷静になろ。
切り替える為にも、シャワーを浴びることにした。
―あ。
マズい…。
『和泉。』
さっき聴いた声が、戻ってきて、オレの全部を揺さぶった。
―アカンっ!!
ぃ、今は、ダメや。
頼むから、引っ込…
『和泉。』
…あ、ぁ、、も、おかし、、、なるっ
どんどん熱を溜めて、ズクズク蠢き始めた体は
もう止まらへんかった。
せやから。
絶対メールにしよ、思たのに…。
昨日の夜
名産やいうブドウで作ったワインを皆で飲んで
牡蠣のオイル漬けやら、ホルモンうどんやら、なんでか、ジャージー牛乳ロールケーキまで食うた。
ちょっと前に、Fマートさんのライバルが出してた、ノドグロのおにぎりの話で
静を思い出した。
逢いたい。
せめて、声が聴けたらなぁ…。
そやけど、酔っ払いやしな…
夜中やし。
どないにも纏まらへん頭で、メールの文章考えながら帰ってきて
そのまま、玄関で寝オチしたんやった。
こんなとこで、一人でグズグズになっても
どないも、しようがあらへんやないか…
―アホんだらが!
前だけイっても、ザワザワして、なかなか引かへん狂おしさに悶えながらも、オレは朝飯を食い、どうにか身支度を整えた。
―アッチもコッチも
今日もすること、山盛りやなぁ…。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
63 / 229