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tea for two
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「ママ。それパパのカップやで。」
「ああ、そうやったわ。」
息子に指摘されて、莉緒はマグを1つ引っ込めた。
朝の紅茶を淹れる
そんな何気ないことにも、いちいちヒョッコリ顔を出す夫からの連絡は、目下キッズケータイへの短いメールのみだ。
「あ、そうや、ママ。パパのメールにな、今日クロネコさんが来るって書いてあった。」
「…クロネコさん?」
「ほら、宅急便の。」
「ああ、ヤ○トさんね。」
マカロニサラダを頬張りながら、悠真が言った。
「クロネコさんがきたら、ボクがハンコ押したいなぁ。」
「別にええけど…たぶん、お昼までには来はると思うわよ。」
「えーっ!?」
「ゆうくんが帰るまで、包みは開けんと待っとくから。ママと一緒に開けてみよ、なっ?」
―宅急便なんかで、一体何を送ってくるんだか…。
そう思いながら、莉緒はトーストを口へと押し込んだ。
「あっ!!ママ、そろそろバスの時間やで!」
「ほな、ゆうくん、上着きて、靴履いて。ハミガキはお昼にみんなとしっかりしてな。」
口の周りを拭いてやりながら、そう言うと
「その前にオシッコ!」
「あぁ、もう~。カバン持って玄関に居るからね。」
「…も、もうちょっとやから、待って!」
「はいはい。制服濡らさんようにしてくれたら、何でもええわ。」
――――――――――――
送迎バスが行ったすぐ後、1台のトラックが停まった。
―なんや、佐川か。
エントランスを走り抜けて行く颯爽とした後姿を、莉緒はぼんやり見送った。
「…2週間、か。」
―ん?
あの人が行って、今日でちょうど2週間てゆうことは
―つまり、ホワイトデー?
「ホワイトデーに着くように送った、…とかや、無いわよなぁ。」
そう言いながらも、少し期待しないではない、莉緒の思いを裏切るように
その日、和泉家に着いたのは
「なんやの、このデッカい蛸はっ!?」
とある港町名産の生のマダコ、だった。
「ママ、これでタコヤキいくつ作れるかな?」
「ふふっ。そっか、タコヤキか。」
息子の言葉を聞いた莉緒は、さっそく蛸を茹でる為のお湯を沸かし始めた。
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