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side I ②
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「どうせ、オレなんか…。
何ひとつ、静には勝たれへん。ずっと負けっぱなしや。
それに、見た目もパッとせん、フツーのオッサンやし。挙げ句に、遠距離やもんな…。」
リビングの床に座り込むとタクマは、ボソボソ呟いては、その合間に涙をスーツの袖で拭った。
「ほら、ティッシュ。それから、いい加減上着脱げよ。」
「ああ、そやな。」
と小さく頷きながら、着替え始めた主を尻目に、俺は冷蔵庫を開けて、飲物を探すことにした。
―結構歩いたし。取り敢えずは、水分補給だな。
それから、タクマの気持ちを聴いてやって…
よく冷えた緑茶を手に、振り返ってみると。
肌触りの良さそうなグリーンの毛布にくるまって、タクマは安らかに寝息をたてていた。
―コイツはコイツなりに、色々考えて、もがいてる。
方向音痴なクセに、冒険に出ちまった子供みたいな変なヤツ。
カレシはそういうタクマの中に、自分には無いものを見て、敵わないと思ってんだろうけどな…。
こういうことは、本人同士で伝え合って、解らなきゃ意味がない。
俺に出来ることは、善きアニキとして見守ってやる位だよな…。
にしても。狭い寝床だぜ。
手のかかる弟分の隣にもぐり込んだ俺は
5秒も経たない内に、気持ちの良い眠りへ落ちた。
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