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その六つ子、憧れ
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「なぁ、おそ松」
ぽつりと名前を呼ぶ次男はいつもの自慢げな様子もなく、俺を呼んだ。
「なんだ?」
「俺は兄らしく出来ているか?」
表情は隠すようにサングラスをかけているせいで読み取れない。
「なんでそう思うんだ?」
「なんでって…」
質問に質問で返す俺に戸惑っているのか次男は黙った。
「悪ぃ悪ぃ。まぁ、不安になる気持ちはお兄ちゃん痛いほどわかるぜ」
「兄さんも不安になるのか?」
「まぁな、そりゃ二十数年ずっと長男やってればそんな風に思う時だってあるだろ」
「そうか…」
橋に佇む次男は恰好ずけるより、恰好良かった。
そんな次男が下を俯くとサングラスの隙間からようやく瞳が見えて、俺は弟が自分から話し出すのを待つことにした。
「…俺はおそ松兄さんに勝てない」
「そうだな」
「だから、どうやったら兄さんのようになれるのか…」
「俺になりたいのか?」
「いや、なれない」
「はは、お前ならできると思うけどな」
そう言いながら次男のサングラスを外してやると、悲しそうな顔が出てきた。
「でもさ、お前が俺になったらカラ松はいなくなっちまうぞ?」
「……」
「俺達は6人で1つ。昔も今も変わんねぇよ」
「…あぁ」
日が沈んでいく。辺りはどんどん静かになって、やがて俺と次男2人きりになった。
あぁ、俺なんて全く兄らしくないのに。
どうしてカラ松は俺になりたいんだろう。
「……じゃあさ、カラ松」
「なんだ?」
「お兄ちゃん、今日お前に甘えてもいいか?」
「…はい?」
素っ頓狂な声を出す次男はわかりやすく赤面する。
「今日だけお前に長男の座を渡してやるよ」
「いや、兄はおそ松兄さんだけだろ」
「だから今日だけだ」
次男はたくさん甘えられたいのだろう。
こいつが甘え下手だということは俺が一番わかっている。
でも今は甘えられたいと言って俺に甘えてる。
「…いいのか?」
「あぁ、その代わり明日は元通りだからな!カラ松お兄ちゃんにたくさん甘えてやるぜ~?」
げっへっへ、と昔の悪役のように笑い次男を煽る。
「……仕方ない兄さんだ」
次男は困った顔で心底嬉しそうに笑った。
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