アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
その六つ子、安心③
-
十四松が泣き止むのに時間がかかった。
俺は泣き止むまでずっと十四松に謝り続けた。
弟を泣かすことしかできない自分がどうにも情けなくて、ただ謝り続けた。
「………」
子猫に餌をあげた後、親猫は近くにある森の入口に埋めた。
十四松はあの猫は生きてて幸せだっただろうと言っていた。
俺もきっとそうだったんだろうと森を後にする。
もうとっくに夕方が過ぎ、空は真っ暗になっていた。
みんな俺達の帰りを待っているだろう。
「夕飯…抜きかな……」
はぁ、とため息をつく。
デパートに行ったまま俺らが帰って来ないせいできっと兄弟酷く腹を空かせて文句を言ってる。
それでも十四松のあの言葉を聞けて、俺の分だけ夕飯なんかなくても別にいいななんて思ったりする。
「怒られちゃうかな?」
「…多分」
「えぇーーー!」
あらかさまにガッカリする十四松に苦笑した。
やっぱりコイツは泣いてない方がいい。
「俺のせいでごめん」
「違うよー!僕のせいでもあるし、一緒に怒られるか!兄さん!」
「…だね」
家に着くまで十四松は陽気に替え歌を歌う。
「ドーはドー!トド松のドー!レーはレモン色の俺ー!ミーは緑のチョロ松兄さん!ファーはファイアー!おそ松兄さん!ソーは空色カラ松兄さん!」
相変わらず語呂はあってない。
歌を歌うというよりそう叫んでいるように聞こえるのは俺だけじゃないだろう。
「…ラーは紫一松兄さん!シーはみんな幸せだー!!さぁ、かーえーりーまーしょー!」
「ははっ…」
「あ、兄さん笑った!なんで!?」
「本当…語呂というより、無茶苦茶だなって思った」
「“むらさき”だからラーだよ!」
「うん、確かに……そうだね」
十四松の歌に、俺は微かに安心してしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 87