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十四松事変②
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「「「「十四松が喋れなくなった!?」」」」
家に帰って4人の兄さんに事情を話すと口を揃えて言う。
「そうなんだよ…エスパーニャンコの時に作った薬らしいんだけどまだ治す方法ないらしくて…」
トド松はしょんぼりと僕の隣に座る。
「十四松が喋らねーと静かだな」
「まぁ確かに…」
「だがこれだとブラザーは不便じゃないか?」
「…確かに」
うーん、と4人の兄は腕を組み何か考える。
「筆談…とかは?」
一松兄さんが最初に案を出す。
「いやいや、十四松兄さんにはキツいでしょそれ…携帯とかは?」
「だってこいつ文字打つの遅いじゃん。しかもだいたい部屋に放ったからかしだし」
「うーん…」
「てか、なんでトド松の薬頼むはずだったのに十四松がこうなってんの?」
はぁ…と一松兄さんがため息をついて続ける。
「まず1人で夜トイレ行けないとか成人済みなのにヤバいよね。そのせいで十四松喋れなくなったもんでしょ?」
「それは…」
「どうすんの?十四松このままずっと喋れなかったら」
「お、おい一松…トド松のせいじゃないだろ」
チョロ松兄さんがトド松を庇う。けど、どうにもいつにも増して虫の居所が悪い一松兄さんはチョロ松兄さんのことを構わず弟に言う。
「少なくとも俺は暗い所とかおばけより十四松が一生喋れない方がよっぽど怖いけどね…トド松いい加減上に甘えんのやめたら?」
「………」
「夜起こされるのもいい迷惑だし、十四松をいい様に扱われるのも見てて腹立つ」
「………」
トド松は何か言い返そうとせず俯いている。他の兄弟も一松兄さんの言葉に耳を傾けるだけで何も言わない。
一松兄さんは僕が喋れなくなったことに酷く苛立っている。
「弟ヅラしないで普通にしてれば?そしたらちょっとはマトモになるんじゃない」
「そ、そんなこと…言ったって…」
「あぁ、怖いの?十四松が一生喋れないより自分のことが大切ってことでしょ」
「ちが…」
「はは、ホント自己中だよね」
「………」
トド松の肩は微かに震えていた。多分、泣くのを我慢してるのかも。
一松兄さんが怒ってる理由もなんとなくわかる。静かな一松兄さんが一番喋る相手が僕だからだ。昔からそれは変わらなくて、一生喋れない可能性があることに不安を感じてるからだと思う。
「あーあ、一松言い過ぎだよ。トド松泣きそう」
ここでようやくおそ松兄さんは口を出す。呆れた顔でため息ついて。
「確かに十四松が喋れなくなるのが嫌なのはわかるけどさ。トド松だって好きで怖がってる訳じゃないだろ?それに薬貰ったんだしもうトド松が怖がることなくなるっしょ」
「………」
一松兄さんはムッとおそ松兄さんを睨む。おそ松兄さんは「コワイコワーイ」なんて言いながら笑ってる。
「……ごめんなさい、十四松兄さん」
ぎゅっ、と僕のパーカーの裾を掴んで言った。
「一松兄さんの言う通りだ…僕が甘えてるせいで…」
トド松のせいじゃないって言いたい。でも、口からは息しか出なくて口を固く閉じた。
……僕のせいでまた傷つけちゃったなぁ。
デカパン博士んとこ行かなきゃよかったかな?あの飲み物飲まなきゃよかった…
早く喋れるようにしなきゃ一松兄さんは機嫌悪いままだしトド松も落ち込んだまま。他の兄さん達にも迷惑がかかる。
早く、治さなきゃ……
「十四松兄さん…?」
僕は立ち上がって襖を開き、部屋から出る。もう一度デカパン博士の所に行って、何かお手伝いをしよう。
ただこのままじっとなんてしてられないからね!
「ちょ、ちょっと待って十四松兄さん!」
トド松は慌てて僕の後を追いかける。
だから僕は「大丈夫!」と口パクを大げさにやり、家を出た。
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