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なあ。
旅館に到着した途端、私の恋人は、どこかはにかんだような、それと同時にどこか不安げな目で私を見つめた。
これって、新婚旅行だよな?
そう問いかける恋人のまなざしは、どこまでも真摯で、そしてまっすぐで。
ああ、そうだよ、と、私は即座にうなずいた。
そっか。――そうだよな。
私の恋人はホッと吐息を漏らして、ふんわりと微笑んだ。
その微笑みを、もう一度見たくて。
私は、旅館の人が私達のところにお茶を持ってきてくれた時に、その人に向かってこう言った。
実は私達、今新婚旅行の真っ最中なんです、と。
旅館の人はにっこりと笑って、それはおめでとうございます、と、言ってくれた。
私は。
私は、恋人は、きっとまた笑ってくれると思ったのだが。
案に相違して、恋人の瞳からは、静かに涙が流れ出した。
だが、次の瞬間、彼のまばゆい笑みが私の視界と私の心を埋め尽くした。
ああ。
世界は、美しい。
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