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ーイントロー
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「クソッ!どこに消えた?」
「見失いましたね」
「まぁいい・・・傷は深いはずだし今夜は冷えるから明日には死んでるさ」
「ですね~」
そんな会話をゴミ捨て場の裏で聞いていた
逃げるつもりは無かった
でも凶器を出すとか卑怯
死ぬならあいつら以外に殺されたい
クズに殺されたら俺はそれ以下のクズって事になるしね
「・・・・・・・・・・・・・・ホントに死ぬかも」
刺されたのはわき腹
理由は咄嗟に左手を庇ったから
「今更」
左手を庇う必要なんか無いのに
もう音楽は捨てたはずなのに
無意識に庇ってしまうなんてね
「はぁ・・・」
血が止まらないし、この寒さで感覚まで失いそう
でもゴミ捨て場で死にたくはないかな
ふらふらと立ち上がり、暗闇を抜けて人気を避けるようにして歩いた
わき腹を押さえている手がぬるぬるする
まだ血が止まらないらしい
「・・・・・・・・・限界」
しばらく歩きその場に座り込み、頭をうなだれて目を閉じた
やはりこのまま死ぬのかな
後悔とか悔いはないと思うけど・・・
天国には行けそうにないだろうし、地獄がもしあるのなら楽しそうだからそこでもいいかな
考えてみればろくな人生じゃなかった
ギターが弾けても仲間に恵まれずすぐに解散・・・その繰り返し
ソロの話もあったけど、俺はあくまでもバンドとしてデビューしたかった
でもみんな我儘で勝手な奴ばかり
自己主張が激しいって言うのかな、だからバンドとして成立しない
アーティストだから?馬鹿じゃない?
そう言う言葉はまともに演奏できる人間が使う言葉だ
人数を揃えただけの素人が簡単にデビュー出来たら誰でもやってるっての
白い息を吐きながら目を閉じると自然にメロディーが浮かんだ
ギターはやめた筈なのにホント、嫌になる
「後悔・・・か」
そうだな、一番の後悔はやはりギターをやめた事かも知れないね
そう考えると俺も短気なのかも
でもバンドを組む度に言われた言葉はもう聞き飽きた
もう少し手を抜けよ・・・って馬鹿としか言いようがない
ヴォーカルより目立つなって、そんなつもりは無いしね
「あっ・・・雪」
そっと手を出してすぐに解ける雪を見つめた
俺の人生もこんな感じかな
この分だと凍死か?
でも最後に雪が見れてよかった
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