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「プリンが好きなのか・・・」
空の容器を見つめ美味しそうに食べている顔を思い出して微笑んだ
本当は素直でいい子なのかもしれない
彼を闇に閉じ込めたのは社会と言う事か?
それもまた悲しいな
でも一番驚いたのはあの発言だった
「やらせてあげる」・・・・・そんな言葉を当たり前のように口にした事に驚いた
聞いていて悲しくなった
そうしなければ生きていけなかったのか?
溜息をつきながら車のキーを持ち、駐車場を出た
家にはあと一つしかプリンが無い
念の為に買って置いた方がよさそうだ
プリンが美味しいと評判の店に行き、とりあえず10個買った
その後、着替えとフルーツを買い家に戻った
そっとドアを開けて様子を確認すると、眠っていた
「・・・・・・・・・・・おかえり」
「起こしてしまったな」
「ううん」
「着替えを買って来たから体を拭こうか」
「・・・・・・・・・・・・・」
「汗もかいただろ?」
「うん」
「どうした?いつも拭いてるのに」
「何でもない」
一通り体を拭いてパジャマを着せた
相変わらず痩せていたが少し肉はついていた
体の所々に消えない痣もあった
しかし左腕は綺麗だった
左腕を大切にする理由
そんなのは一つだろう
「そうそう・・・使わないギターがあるのだが」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「暇なら弾いてみるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・もうギターは」
「なら捨てるか・・・あっても私には邪魔な物だし価値もわからないからな」
「捨てるの?」
「いらないんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・でも捨てるのは」
「じゃ、お前がもらってくれるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「じゃ、捨てるか・・・」
「もらうかどうかはわからないけど見せて欲しいかも」
「ああ」
部屋を出て物置に向かい、一度も使っていないギターを探した
と言うか、何故こんな物があるんだろう・・・
他にバイオリンもあるし何故かアコーディオンもある
記憶に無いが、やはり誰かにもらった物なんだろう
部屋に戻りギターを差し出した
「これだ」
「このギター・・・どうしてこんなに高価な物が?」
「さぁ」
「しかも一度も使ってないし、弦もすごくいいものだよ」
「へぇ」
やはり表情が変わったな
ギターの為に左手を庇い続けていたんだろう
「何か弾いて欲しいな」
「・・・・・・・・・でももう」
「じゃ、捨てるか」
「待って!わかった」
少し脅しに近いが・・・まぁ仕方が無い
「音が狂ってる」
「だろうね」
「でもクラシックは弾けないかも」
「何でもいいさ」
「うん」
しばらくしてチューニングが終わったのか、何かを確かめるように弾き出した
「いい音・・・とても澄んでいて綺麗な音」
「よかった」
「じゃ、知らないかも知れないけど」
「ああ」
そう言ってギターを弾き出した
確かに曲は知らないがかなり上手だと言う事はわかる
音が澄んでいる・・・隠されている楓の心のようだ
「その曲は?」
「即興」
「すごい才能だな」
「才能だとは思わない・・・曲が勝手に浮かぶだけ」
「それを才能を言うんじゃないのか?」
「わからない」
即興でこのレベルか
勿体無い
何とかして楓に居場所を与えたいと思ってしまった
それから毎日、楓はギターを弾いていた
ギターがあれば退屈と言う言葉は無いらしい
相変わらずプリンだけは食べたがる
食事も出来るようになったが好き嫌いが多すぎる
「楓、野菜も食べなさい」
「嫌」
「じゃ、魚」
「骨があるから嫌」
「取ってあげるから」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
最近の若者は骨が面倒だから魚を食べないのか?
確かに面倒だが栄養があるし骨を取った魚を食べさせた
「プリン食べるか?」
「食べる」
「わかった、じゃ野菜も食べなさい」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうした?」
「食べる」
「いい子だ」
何とか野菜を食べさせ食事を終えた
約束どおりプリンを渡して楓を見つめた
明日辺り抜糸出来るがその後どうするのだろう
やはり出て行ってしまうのだろうか?
このまま抜糸しないで・・・と言うわけにも行かないし
困ったな
そのままずっと一緒にいたいと思えてしまうだなんて
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