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雨が止んだその日◇05
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沈黙が続いていると彼が話題を変えてくれた。学校は楽しいのか。部活には入っているのか。休日は何をしているのか。
どれも明るい話題のはずなのに、頭の片隅には悲しそうに笑う桑原さんがいた。
「あ、もう八時になるね」
「本当だ……それじゃあ俺、帰ります」
買ってしまったゼリーはどうしよう。自分用にみかんゼリーと、桑原さん用にミックスゼリーを冷蔵庫にこっそり入れたままだ。まあ気付いたときに食べておいてくれるだろう。
「帰るのかい」
「はい。明日も学校なので」
「泊まっていったらどうだい。学校にも近いし、そのまま行ったらいい」
「えっ!」
泊まるって、桑原さんの家に?泊まる、泊まる、泊まる……と、ぐるぐると考えていると顔が緩んでにやけそうになった。
どうしよう、嬉しい。
「買ってくれたゼリーも、お風呂から上がったら二人で食べよう」
「……気づいてたんですか」
「見てたからね」
みてた。
あまり期待させないで。
「……泊めてくれますか」
「ああ、いいよ。ご両親にちゃんと連絡を入れたらね」
「ありがとうございますっ……」
お先にどうぞと言われたので遠慮しつつも先にお風呂を借りた。
急いで、というよりも、緊張のあまり十分程度で出て来てしまった。普段香る桑原さんの匂い。シャンプー、リンス、ボディーソープ。自分から漂う空気が変な感じ。
「あれ、もう上がったのかい」
「あ、はいっ。ありがとうございました」
バッと頭を下げると水滴が零れた。ぽつ、ぽつ、という小さな音。
「ドライヤーでちゃんと髪を乾かしなさい。風邪を引いたら大変だ」
「は、い……」
風呂上りのせいだと誤魔化した、体の火照り。顔があつい。
「直ぐに入ってくるから、出たら食べようね。ゼリー」
頷くだけの返事をしたら、桑原さんが微かに笑った。鼻辺りに吐息を感じてどきりとした。
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