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雨が降った日◇02
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「それって雪菜ちゃんのこと?」
「だから何で宮崎さんがでてくるんだよ。あの子とは何もないって」
「じゃあ新しい誰か、好きな人ができたんだ?」
返事に詰まらせていると、辛気臭いな!と怒られた。
「そんな感じの人だよ」
「へえ〜。涼太にもいよいよ春がやってきたか。で、いつ付き合ったんだよ?相手は誰?」
お節介な真守に言うんじゃなかったと後悔してももう手遅れだ。「付き合ってなんかいない」とだけ返すと、すぐさま「どんな子?」と探りを入れられた。
「年上で、優しくて……美人な感じの人」
男だなんてさすがに言えないから誤魔化していると、怪しそうに見つめられた。
「涼太に年上の趣味があったなんて初耳だなあ。写真ないのかよ」
「ないよ。別に誰を好きになろうと勝手だろ」
「あ!今日いつもより早く来てたもんな。まさか朝帰りかよ?!」
「そんなんじゃないって!あの人は、俺が片想いしてるだけで、そういう関係じゃない」
そういう、汚い関係じゃない。もっともっと、今にも壊れちゃいそうな儚いもの。
「でも優しさが凶器だなんて、相当悩まされてるんじゃないのか」
「そう思う?」
自分でもそう実感したというように苦笑を浮かべると、真守は窓の外を見つめて溜め息混じりに呟いた。
じめじめと蒸し暑く、吹く風も生温かい。どこか遠くで虫の鳴く声が聞こえる。
「俺は楽しい恋愛しかしてないからなあ。苦しいって感じたら、すぐに諦めちまう」
「諦める?」
「なんか嫌じゃん。本気で好きになるのって、怖いし。傷付くのって嫌だから、今は楽しいだけでいいかなって」
「……若いなあ」
老人みたいな言い方をすると二人して声を出して笑った。
俺たちはいつだって臆病で、嫌なことがあれば逃げることだってできる。まだまだ未来は長いから、と言い訳をして、楽しいものだけ選んで笑っていればいいのだ。
恋人と結婚をしたいと思うことがあっても、この人と結婚したいと思って付き合うことはまずないだろう。
そういう甘い考えができるところが、子供の唯一の逃げ道だとしても、それじゃあいつまで経っても桑原さんに追い付けない。
子供でなんていたくない。
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