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雨が止んだなら◇12
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彼の家に着いた頃には風も強くなり、すっかりシャワーでも浴びたかのような有様になっていた。
「すごい雨だね、こんなに降るとは思わなかった」
参った、と言うように奥からタオルを二枚持って来て俺に渡した。
「ありがとうございます」
返事をして受け取ると、桑原さんは俺の髪に触れた。ツゥ、と撫で下ろした髪から雫がポタポタと地面に落ちる。
「良かったら上がっていくかい。お茶も出すし、お風呂にも入った方がいい」
「えっ、いいですよ、大丈夫です」
帰ったら直ぐにシャワーを浴びます、と告げながら力強く髪の毛を拭くと、彼は冷たく冷えた服を気にしながら口を開いた。
「そんな格好で風邪でもひかれたら大変だ」
「あの、傘を貸していただければ大丈夫です」
申し訳なさそうにそう呟くと、彼の大きな手の平が俺の腕を掴む。
「……あの日みたいにはいかないものなのかな」
桑原さんは困り顔を浮かべながら俯くと、再び俺を見つめた。
「今日は一人で寂しくカレーにしようと思っていた。でも涼太くんがいてくれたら、嬉しい」
あの日と同じやり取り、同じ言葉。
「……ずるい」
「ごめん」
苦い笑みを見せた彼が俺を室内に招き、先に風呂に入るように指示した。いくら夏だからと言ってもこれだけ濡れてしまっては少しばかり寒気がするので、お言葉に甘えて先に入ることにした。
窓に当たって不気味な音を立てる雨と風は、今日中には止みそうにない。
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