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雨が止んだなら◇14
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言葉通り桑原さんは腫れ物のように俺に触った。自分も服を脱ぐと向かい合って湯船に浸かり、確かめるように互いを触り合うだけの行為が数分続く。何度も俺の様子を伺って、目で大丈夫?と尋ねているようで、その度に小さく笑って返す。
大丈夫。桑原さんになら俺の全てをあげられる。
「……大人気ないね。涼太くんに甘えてしまうなんて」
情けなく笑う彼に、「大人気ない?」と繰り返した。
「同情して一緒にいてくれているんじゃないのかい」
「まだ不安なんですか」
「私も若くはないからね。いつ捨てられてしまうか分からない。同情なら、すぐに……」
終わりが来てしまう、そう言いたいのだろうか。
無理もない。一度結ばれた俺たちは、俺のエゴで離れてしまったのだから。
「不安にさせてごめんなさい。でも離れている間、ずっと桑原さんのことを考えていたんだよ。俺からもう会わないって言ったのに、我儘ですよね」
桑原さんの動きが止まった。お互いに顔を合わせない、重い沈黙と静寂が流れる。
「……傷付くのが嫌だったんです。素敵な奥さんだったから、比べられて、やっぱり違うって言われるのが嫌だったんです。信じてないって言ったのも、そうなるかもしれないって意味で……」
そう口に出して、ああ裏切ったのはやっぱり俺なんだ、と気付いた。
「ーーごめんなさい」
唇を噛み締めた。
脱力した体が重苦しい。
「おいで、涼太くん」
ゆっくりと顔を上げると、優しい表情をした桑原さんがいた。ちゃぷん、ちゃぷん、と湯の中で膝を叩く彼に言われた通り、桑原さんの膝に跨って見つめる。
「これでおあいこ。私も、涼太くんも辛い思いをした。だからお互い様。もうおしまい」
「桑原さん……」
そっと顔を近付けてきた彼に応えるように目を瞑った。一瞬触れて離れて、また角度を変えて触れる。そんなキスを数回繰り返した後に深いキス。彼の舌が俺の歯をなぞり、くすぐったくなってピクリと肩を揺らした。背中をツゥっと撫でられて、思わず小さく声が漏れる。
優しい手。優しい彼。
「怖い?」
「怖く、ない。でも一度やったからって、慣れるものじゃないですね」
桑原さんを求めているはずなのに、本来受け入れるべきではない入り口に異物が入ると思うと、幼子が酷く尖った注射を嫌う恐怖に似た何かが生まれた。
「でも、桑原さん、だから」
そう伝えると彼は少しはにかんで再び俺に口付けをした。
そっと伸ばされた彼の手が互いの自身を擦り合わせる。生々しいそれと熱さに驚きながらも、下半身から伝わる鼓動に妙に興奮した。
「んっ」
湯船の中で水と水がぶつかり合う。次第に動きに激しさが増し、湯が大きく揺れて体勢が持って行かれそうだった。溢れ出る声が風呂場で響いて羞恥すると、前かがみになって桑原さんの肩を掴んだ。
「嫌だ?」
「変な感じ、するだけっ……」
だんだんと強くなる俺の手は桑原さんの肩に痕を残す。これが嫌悪でないと気付くと否や彼は空いた右手で俺の胸の突起を甚振るので、必死に耐える声も短い吐息と共に零れた。
「涼太くん、顔上げて?」
ふるふると首を横に振ると、彼は面白がって耳元で意地悪そうに呟いた。
「すごく熱い……涼太くん可愛いね。気持ちいいのかい」
「あっ、や、やだッ……見ないで、恥ずかし、」
彼の声を聞く度に、心臓が下半身に移ったんじゃないかというくらいドクンドクンと大きな振動を感じていた。自身が疼く。恥ずかしくて堪らないのに、それよりも彼に触れていてほしいという欲が生まれる。俺はいつからこんな身体になってしまったのだろう。
「ん、桑原さん、もうイきたいっ」
「待って。一緒にいこう」
絶頂を迎えた俺のものは桑原さんの手によって抑え込まれ、おかしくなるんじゃないかというくらいにガクガクと震えた。
「優しくするって言ったのにっ」
痛みや嬉しさとはまた違う何か得体の知れない感情によって溢れた涙を拭うように、目尻に唇を立てた彼が「ごめん」とひどく優しい声色で囁く。
「腰、浮かせて」
言われるがまま必死になってわずかな隙間を作ると、桑原さんは俺の腰を掴み彼の自身を俺の秘部に当てた。
「やっ、あ、なにっ」
湯の中で思うように抵抗できず、重力に負けて真っ直ぐ落ちる。覚悟もなしに訪れた圧迫感は内部を刺激し更なる快感を与えた。
「ぁっ、あ……っ」
無我夢中で桑原さんの首元に抱き着くと、彼も俺の腰を強く抱いた。
俺の中に桑原さんのものがあるのだと思うと訳もなく興奮して、内側で擦れる熱い何かを実感した。
「桑、原さッ……苦し、い……?」
次第に増える眉間のしわと険しい顔に心配して尋ねると、崩れた笑みを見せてくれた。
「苦しくないよ。気持ちいいよ」
「よかった」
こんな俺でも彼を幸福に満たすことができた。それが嬉しくて俺も笑った。
「……でももう、限界かもっ」
頭部を首元に摺り寄せた桑原さんの自身が、中でギチギチと絶頂を迎えたそうにしているのは理解できた。
「ン……俺も」
縋るようにして彼の首筋に口付けをひとつ落とし、再び顔を見つめ合う。
「中に、シて、いいですよ」
「え……でも……」
「桑原さんが、欲しいんです。好きだから。桑原さんのことが、好きだから」
「うん……俺も、好きだよ。涼太くん」
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