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つまらないはなし◇03
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七時からやるバラエティー番組を見ながら木下が残していった夕食を食べた。今日はオムライスのようで、ラップをかけられたそれを電子レンジで温めると表面に水滴がついた。人工的な温かさを感じるのが唯一の救いだ。
ぼうっとテレビ画面を眺めていると、ふとした瞬間に「ねえ」と誰かを呼びそうになって嫌気がさした。一人には慣れていたはずなのに、いないと感じると何かが足りなくなる。そんな自分が嫌で、逃げるようにシャワーを浴びに風呂場へ向かった。
風呂から出ても時刻は九時をギリギリ回ったところで、木下が帰るまであと一時間もあった。もうテレビも見飽きてしまったし、コンビニで何か買って来ようか。そう考えて、特に当てもなく家を後にした。
二歩、三歩と足を進めていくと、自然と足が彼のいる場所へ向かっていることに気が付いた。
「……ここから二駅、仕事場の方向と逆に向かって、駅前のコンビニ」
木下の言葉を思い出して繰り返してみる。
会いたい。彼の笑った顔が、早く見たい。
「……あー、もうっ」
速さを増すこの足と、微かに冷たい風を見つめて情けなく笑った。
「俺、結構木下のこと好きなんじゃん」
もう言い訳ができない。するつもりもない。
彼に告げてしまおう。随分と前から引きずって、拗らせてしまった馬鹿みたいな初恋を、もう一度彼に言おう。
いつが良いだろうか。今日か、明日か、明後日か。また渡せなかったラブレターのように先延ばしになってしまうかもしれないけれど、最悪俺が死んでしまう前には必ず、自分の口で告白しよう。好きだって言おう。
好きだって、言いたい。
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