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新生活
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新しい町、新しい部屋、新しい朝ーー。
待ちに待った俺の大学生活が今日から本格的に始まった。
天気良好、日差しの暖かさが暑くも寒くもない寝起きの体にはちょうどいい清々しい朝。
まさに初日にはふさわしい朝だ。
淡々と準備を終え、何度も鞄の中や身だしなみを確認し、そのまま鏡越しに目を瞑る。
今日から大学生なんだな‥‥俺‥‥
緊張とワクワクとで高鳴る心臓を落ち着かせるため1度深呼吸をした。
「はぁ‥‥。よし、バッチリだ。いってきます‥‥!」
新生活スタートだ。
自分の変な心配グセもあり、まだ知らない土地を歩くのが不安で落ち着かないからと出発するにはだいぶ余裕がある時間帯に家を出て来てしまったが、案外早すぎたかもしれない‥‥。これでは予定時刻よりかなり早く駅に着いてしまう。
コンビニにでも寄ってくか‥‥。飲み物も欲しいし。
「あの…」
「うわ、びっくりした!」
交差点を曲がると突如目の前に腰の曲がったお婆さんが立っていた。
「あらあらごめんなさいねぇ…驚かせるつもりじゃなかったのよ…」
お婆さんは申し訳なさそうに眉を下げ小さい体を更にしゅんと小さくなった。
「だ、大丈夫ですよ!それよりどうかしましたか?」
「実はね散歩をしていたら道に迷ってしまってねぇ…袋の中にこれが入ってたから多分ここに書かれてる所が私の家だと思うのよ…ここまで道案内してくれんかね…」
お婆さんの手に持ってある巾着から出された1枚の小さなメモ用紙を見るとその紙には住所が書かれていた。
自分の家の帰り道も分からないなんて…
この人認知症‥‥?
「‥‥〇丁目〇番地。ちょっと待ってくださいね」
スマホを取り出し住所を検索するとここからそう遠くない場所だった。
「ここから近いですね。良いですよ。案内しますよ!」
「助かるわ…ありがとう」
それを聞くとずっと不安そうな表情を浮かべていたお婆さんの顔が一気に安堵のこもった笑顔になった。
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