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僕は愛する人の盾となる
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「ほらぁ、覚えてませんか?
初めて話をした屋上で
恭先輩が言ったこと………」
「周防が……言ったこと……?」
「あ、バカだから思い出せませんよね
すみませんでした
アンタ……
オーディション、
受けまくってるんでしたっけ」
「……………っ!」
「映画やらCMやらドラマやら……
今月に入って4回、
今週も、1回行ってるそうですね」
「な、なぜそれを……」
「さぁ……何故でしょうか」
――――この1週間
ただぼ――……っと先輩のことを
想いながら過ごしていた訳じゃない
僕は僕なりに
先輩を守る方法を
ひたすら考えていた
屋上の会話を頼りに
何か糸口はないか
嫌な記憶を
繰り返し思い出し
探して探して
ようやく見つけた
先輩を守るための
僕の『盾』
初めて自分から
『西園寺 奈津美』に連絡をし
過去のオーディションを
すべて洗い出してもらい
『坂崎 直人』の情報を手に入れたんだ
まさか、
こんなに早く
使わされるとは思わなかったけど……
「……なんか、CMのチョイ役、
通りそうみたいですよ?」
「え?ほ、ほんと?」
「あ―――………でも、
このままだと
他の人になるかもしれませんね……」
「そ、そんな…………」
「何言ってるんですかぁ、坂崎先輩!
お得意の、
お金積むなり脅迫するなり
やればいいじゃないですか―――………
…………できないんですか?」
「…………………」
「それはそうですよね―――………
芸能事務所に所属してること、
ご両親は知らないんでしたっけ
これじゃ、十八番の『親の権力』も
使えませんよね――………」
「なんでそこまで………」
「さぁ……何故でしょうね」
驚愕の表情を浮かべながら
冷や汗をダラダラと流す彼を
僕は見下しながら言った
「………まぁ、今回は
見逃してあげますよ
ただし、
恭先輩や僕に
危害を及ぼすようなことがあれば
アンタの夢は
一生涯断たれると思ってください」
「な、んだ……と……?」
「こう見えても
華やかな世界を操るくらいの力は
持ってるんですよ
モチロン、
僕のではありませんけど
まぁ、アンタと同じ土を踏むのは
虫酸が走るくらいイヤですが
大事な人を守るためなら
プライドだって捨ててやりますよ」
「き、きさま………」
馬鹿は時々、
こちらが予想もしてないような行動に出る
追いつめられた坂崎は
油断していた僕を突き飛ばし
馬乗りになった
首を両手で締め上げられ
ひゅっと息が止まる
「あは、は、………ナメるなよ?
僕だってやろうと思えば……
お前くらい……っ…」
ギリギリと首に食い込む指を
引きはなそうと掴んだけれど
酸素が行き届かないのか
痺れて思うように動かない………
意識が朦朧としてきた………
ダメだ……堕ち…………る………
……………恭…………
―――――――――
急に体がフッと軽くなり
僕はあの世に行ったんだな、と思った
「ぐえっ………」
坂崎の呻く声が
ナゼか遠くから聞こえ
固く閉じていた目を
ゆっくり開く
誰かが僕の横へしゃがみ
僕の体をゆっくり起こしてくれた
「椎名くん!しっかりしろ!」
澄んだ優しい
力強い声…………
グルグルと回りながら
霞む景色のなかで
凛々しくも
ユラユラと揺れている瞳と目が合う
「真柴………せん、ぱい……」
僕が呼ぶと
真柴先輩はホッとした様子で
優しく微笑んだあと
苦しそうに目を細めた
「すまない……助けに入るのが遅れた」
僕は力なく微笑み
言えたかどうかわからない返事をすると
僕は意識を手放した
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