アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
烏丸の大切な人。
-
「ただいまー」
「おかえり!!」
満面の笑みで俺を迎えるおっさん。
烏丸のところに行ってきたなんて言えねぇ…
「なぁなぁ、おっさん。」
「ん?」
「うるが…はく…?だかって奴知ってる?」
「え…?……どこでそれを?」
おっさんの顔色ががらっと変わったのがわかった。
一瞬目を丸くして俺を見つめた。
「玲於、その人に会ったのかい!?」
「え、あ…いや、友達といるとき烏丸に会って…さ。それで聞かれたから…」
「そ、そっか…」
「誰なんだよ?その人」
俺を見ていたおっさんの目は、今度は下を見て
少し険しい表情になった。
「……烏丸さんの大切だった人かな」
「え!?」
「今はいないけど…ね。」
烏丸の大切だった人…?
"あの"烏丸の…?
そんな人いたんだ…
「何年か前…3年くらい前だったかな…。その時に烏丸さんが可愛がってた男の子がいてね
その子の名前が宇瑠賀 珀っていうんだよ。」
「変わった名前だなー。そいつって、どっかいったの?」
「いった…というか…、なんというか…。まぁそうだね。」
「………?」
「…そうか。わかったよ。玲於が烏丸さんに好かれてる理由が」
俺が烏丸に好かれてる理由…?
可愛いとかなんとか…言ってるよな、いつも。
「その子、玲於とそっくりなんだよ。今気が付いた…。
玲於…玲於は玲於だよね?」
「は?そ、そうだけど?」
「そうだよね…。それならいいんだけど…その子の顔はそんなまじまじとは見たことないけど、確かに似てる…」
「そんなに?」
「うん。いい子だった、とっても。その子と玲於が重なったのか…玲於がその子だと思ったのか。
玲於の名前はおじさんがつけたし、その子ではないけど…
というより、その子なはずないし…」
「そいつ、今何やってんの?」
「その子は…ね、亡くなったんだよ。」
「え…」
「忘れるって烏丸さんは言ってたけど、忘れられるはずない。一瞬は忘れてても無意識に面影を追ってたんだろうね。」
「な、なんで…死んだんだよ?…べつに答えたくなきゃいいんだけど…」
「おじさんはその場にいなかったからわからないけど…、玲於が前に連れ去られた時があったでしょ?烏丸さんと助けに行った時の。
あんな感じでその子が連れ去られてね、その後おじさんも協力してずっと探してたんだけど
未だに見つからないんだよ。
もう…生きてはいないだろうからね。」
「はぁ!?まだ生きてるかもしれねぇじゃん!!」
「この世界はね、用がなくなったら切り捨てる。そういうのがあるから生きてる望みはもうないんだよ。
これだけ年月が経てば…ね。」
「…………。」
烏丸…
なんかまじで悪いことした…俺。
こんなこと聞いたら もうまともに烏丸の顔みらんねぇよ。
「なんで諦めんだよ。」
「烏丸さんはおじさん達の協力を断った後もずっと探し続けてたんだよ。一年くらい前に、前に進むって言い出して…」
「馬鹿だろ!!烏丸!!」
「…玲於?」
「そんなに大事なら諦めねぇだろ!!」
なんで諦めんだよ
有り得ねぇから。
もしそいつが生きてたらどうすんだよ。
ずっと助けを求めてたらどうすんだよ。
「烏丸のとこ行ってくる!!」
「ちょ、ちょっと玲於!!」
「離せよ!!」
グッと腕を強い力で掴まれて振り解けない。
「玲於…烏丸さんは充分辛い思いをしたんだよ?また苦しませるようなこと言ったら…」
「そりゃしただろうな!!けど、もし…もし生きてたらどうすんだよ!!そいつの方がもっと辛いだろ!!
俺は…あのときの状況で、ずっといるなんて耐えられねぇ。助けがいるだろ。」
「玲於…。わかった、おじさんも一緒に行くよ。」
おっさんの車に乗って、烏丸の家まで向かった。
どこを探せばいいのかも
何をすればいいのかもわからない。
けど、このまま放っておくなんてできない。
烏丸には借りがあるし、人探しくらい手伝える。
そんな甘い考えが通用するわけもないのに。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
86 / 158