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おばさんに感謝。
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白いファイルの表紙に俺の名前が書いてある。
お「玲於君も知りたいのかな?」
玲「……うん。」
お「もし聞きたくないこととかがあったら言ってね?」
玲「わかった。」
ニコッと笑って俺にそう言うおばさん。
お「国塚玲於君、名付けたのは谷口さんだね。年齢は17歳。男の子」
玲「うん。」
お「母親は去年亡くなってるね、父親は消息不明。」
玲「…死んでんだ…母親…」
お「うん。あえて玲於君には伝えてなかったけど、病死だね。」
玲「へー。」
別に死んだかどうかなんて興味が無い。
母親だっつっても会ったことねぇし。
お「兄弟だけど、戸籍上は一応いるみたいだよ。その辺の情報は一切ないけど。」
玲「いんの!?」
お「玲於君には双子のお兄さんがいるみたいだよ。」
玲「双子?」
谷「玲於…やっぱり珀君が…」
玲「まじ…かよ…」
お「ん?心当たりあるの?」
玲「今俺が住んでる家に俺とそっくりの奴がいて…」
お「あら、ほんと?明確にしたいなら一度検査してみるといいわ。」
信じらんねぇ…
俺に兄弟がいて…その兄弟がよりにもよってあいつとか…
谷「検査してみる?」
なんか嫌だな
あいつと兄弟とか…
でも…実際どうなのかは知りたい。
玲「…する。あいつがいいなら。」
谷「わかったよ。それじゃあ、帰ったら聞いてみようか。」
お「玲於君、唯一の血縁者で もし仲良く出来そうなら 少しでも仲良くするんだよ。」
玲「あいつだったら無理。」
お「ふふっ。玲於君ならそう言うと思った。一匹狼って感じだもんね。でも、もし兄弟なら他の人とは違うふうに助け合えたりすることもあるから 嫌だろうけど少しは考えてみて?」
玲「……。」
お「まぁ何れわかるよ。」
谷「…他に何か情報はありますか?」
お「そうだねぇ…。谷口さんに助けられた時が まだ生後3ヶ月で腕と背中に大きな痣があった。誕生日が7月13日。…それくらいだね。」
玲「…へー。」
谷「そうですか。ありがとうございます。」
お「因みに玲於君。君に親ができなかったのはね、谷口さんとおばさんが約束したからだよ。」
玲「…約束?」
お「谷口さんが玲於君をここに連れてきた時、『僕が必ず幸せにするから、それまでここで預かってください。』って頼み込まれてね。
おばさん達は早く家族ができる方がこの子の為だって言ったんだけど 聞かなくてね。頑固な子だよ。谷口さんも。」
ふふっと笑うおばさん。そして苦笑いするおっさん。
おっさん、あの時言ってたこと…本当だったんだ。
必ず迎えに来るって。
谷「ごめんね、どうしてもおじさんが育ててあげたかったんだ。」
玲「…さんきゅ。」
谷「皆さんにも迷惑かけて申し訳ない…。」
お「いいえー♪谷口さんなら必ず約束を果たしてくれると信じてましたから♪」
谷「ありがとうございます。」
お「手のかかる子ほど可愛いものですし、玲於君にとってはただの『ウザイおばさん』だったと思いますけど、おばさんにとって玲於君は本当の子供みたいなものでしたから。」
玲「……ごめんな。」
お「え?」
玲「今まで…殴ったり怒鳴ったり…迷惑かけて…ごめんなさい。」
谷「………。」
急に部屋が静かになった気がした。
おばさんが驚いた顔をして俺を見てる。
そしておっさんは俺を見守ってる。
玲「…今になってやっと気がついた。おばさんは…俺にとって母親みたいなもんで…ちゃんと面倒見てくれて、悪いことしたら怒ってくれて…俺が何しても見捨てなかった…。」
おばさんの顔を見て話せない。
何故か恥ずかしくて、なんだか言いづらくて。
玲「おばさんの思った通りには育たなかったかもしれねぇけど…おっさんが迎えに来てくれるまで、見捨てないで育ててくれて……その、…ありがとう。」
お「……。」
俯いて黙ってるおばさん。
自分の気持ちがうまく伝わってるかはわからない。
でも自分なりに伝えてみる。
玲「俺にとっても…おばさんは母親みたいなもんだから。これからもちょくちょくここに来ていいか…?」
お「…っ、あ、当たり前じゃない!!いつだって、ここに来て好きなだけいていいのよ!!」
ふとおばさんの顔を見ると
…泣いていた。
鼻を真っ赤にして。
泣きながら笑ってた。
喜んで泣いているのか、嫌で泣いてるのか なんなのか。
俺にはわからないけど、泣いてる。
お「立派に育ってくれてありがとうね…」
玲「べ、べつに普通だし…」
お「嬉しいよ…ほんとにありがとう。幸せになるんだよ…」
両手で顔を抑えて消えそうな声で『幸せになるんだよ。』と言うおばさん。
『ありがとう』そう言われて不思議な気持ちになった。
あんだけ迷惑かけてきたのに、なんでありがとうなんだろう?
お「谷口さん、玲於君のこと…よろしくお願い致します。」
谷「はい。お任せ下さい。」
お「ありがとう…」
なんだか照れくさいような。なんかよくわからん感情。
これが母と子のあるべき姿というか…そんな感じか?
不思議と少し満たされた気分になった。
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