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天使が向かうのは。
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「総長!!曽根田組の連中が最近嗅ぎ回っています!!」
「…曽根田組?また?」
「曽根田組って?」
「あぁ…曽根田組っていうね、昔から色々あるもう一つの組があるんだよ。」
「へー。」
おっさんは大した気にもかけていないようで
ふーん、またかー。くらいの反応しか見せない。
でも、毎日毎日あまりにもしつこかったからか
おっさんが組員を引き連れて
曽根田組の所に行くことになった。
もちろん俺も一応若頭という立場になってしまったわけだから
おっさんについていくことにした。
殺り合いとかになったらどうしよう。
若頭になったからといって
元々ヤクザの一員でもなかった庶民だったわけだし
それくらいの心配はする。
おっさんや組員達は、別の組のところに行くんだから
それくらいの覚悟はできているだろう。
曽根田組の組員らしき男がおっさんの姿を見た途端、焦って戻っていく。
そして少しして
向こうの組の人達がぞろぞろとこっちにやってきた。
先頭にはおっさんと同じくらい身長がある
おっさんより少し若い感じの男。
その男を見たおっさんが口を開いた。
「これはこれは、曽根田組総長さん。」
いつも通り穏やかに話すおっさん。
軽視してるわけじゃなさそうだけど
余裕がある表情。
「おー、国塚組ー。」
なんだろう。
おっさんと違って少し軽い感じがする。
若いから…?
「君達、最近うちを嗅ぎ回っているようだけど…何か用かな?」
「あー、ちょっと人さが……し……ぁぁぁあ!!」
「…!?」
ふとこっちを見た曽根田組総長らしき男は
いきなり大声をあげた。
そしてすごい勢いで俺の両肩を掴む。
「あなただ!!あなたが!!」
「は!?」
「天使!!」
「なんなんだよ、てめぇ!!」
わけのわからんことを
あまりにもすごい勢いで言い始めるもんだから
俺は相手が別の組の総長だということも忘れ、
なんなんだよ、てめぇ…と、軽々しく言ってしまった。
「是非!!うちの組に来ないか!?いや!!来てくれ!!」
「はぁ!?」
「あなたは天使だ!!曽根田組若頭として、うちに!!」
!?がいっぱい俺の頭上に浮かぶ。
肩を揺さぶられ
ひたすら天使だ、若頭になれと言ってくる。
俺にはどうしていいやら…
「曽根田組総長さんねぇ。勝手なことばかり言われては困りますよ。」
「…?あんたらには関係ない。この子はうちで引き取らせていただくんで。」
「それは無理ですねぇ。この子はうちの組の若頭なもんで。気安く触らないでいただきたい。」
淡々と話すおっさん。
俺にはなにがなんだかさっぱり。
そして、ずいっと俺と曽根田組総長との間に入り
俺を曽根田組総長から引き離す。
「困りますねぇ。」
「何が何でもその子にはうちに来てもらうぞ。」
「それは無理です。」
「何が無理だ!!力ずくでもその子はうちが引き取る!!」
「んー、困りましたねぇ。この子に何かあっては困るので暴力沙汰は避けてるんですけども。」
「だったら!!大人しく引き渡せ!!」
なになにどうなってんの…!?
いきなり二つの組の総長で俺の取り合い…!?
なんで俺!?
変なことに巻き込むなよ!!
総長同士、バチバチと火花が散っているのがわかった。
おっさんと出会ってから
なんでこうなったとか
そんなんばっかじゃね…?
次から次へと問題に巻き込まれて
わけわからんくなって…。
未だに引っかかっていることもある。
あの時、おっさんが言った
俺のことが好きになったってやつ…
ずっとはっきりしてないな…。
今にも戦争が始まってしまいそうな程
総長同士で火花散らしてんのに
俺は全く関係ないことまで考えてた。
「わかった!!国塚組総長!!1泊だけ、その子をうちに貸してくれ!!」
「はぁ…なんでそうなるんですか…」
おっさんは実に面倒くさそうにため息を吐いた。
「このままじゃ拉致があかない。俺も引く気もないから、いっそその子に決めてもらおうじゃないか!!」
「……玲於、あっちの組に行きたいかい?」
「いいや。」
「なっ!?そんなきっぱりと…。」
「だ、そうですけど?」
「俺は力ずくでもその子を引き取らせてもらう。そうなったらどうなるか、お前にはわかるだろ?」
「…全面戦争ですか。はぁ…わかりました。では、今から明日の12時までです。言っておきますが、この子に怪我でもさせたら許しませんよ?」
「誰が天使に怪我なんかさせるか。」
「玲於?もし何かあったらすぐ電話してくるんだよ?いつでも行けるようにしておくから。」
「…あぁ、はいはい。」
だからさ…なんでこうなんの。
なんで俺が曽根田組にお泊まりーなんてことに…。
っつか、ずっと天使だ天使だって言ってくるあっちの総長はなんなんだ。
幻覚でも見えてんじゃねぇの。
あー、めんどくせー…。
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