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愛しの王子様
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王子様?会いたかった?
なんの話?
僕はただでさえ今の状況に混乱というのに、
さらに頭がぐちゃぐちゃになる。
「す、ストップ!ストップ!!」
僕は混乱しつつ、とりあえずユイさんを退かして
身体を起こす。
そして、そっと距離を取る。
「とりあえず!とりあえずストップです!」
僕は、えーっと、と額に手を当てる。
「ユイさんは綾人さんの事が好きなんじゃ・・・?」
「はぁ?あんなむさくるしい筋肉バカのどこがいいわけ?」
・・・あのベタ惚れっぷりは一体何だったの?
え、もしかして嘘だったの?やだ怖い。
というか綾人さん、ボロクソに言われてて可哀想。
少し同情する。
「・・・ユイさん、僕と誰かを間違えいませんか?」
「えっ・・・」
彼は目を見開く。
「だって僕達、体育祭の時に【初めて】会いましたよね?」
「・・・それ、本当にそう思って言ってたの?」
「? そうですけど」
「・・・なんでそんなウソつくの」
ユイさんはまっすぐに僕を見る。
その目には悲しみと静かな怒りが浮かんでいた。
「本当ですって。ユイさんとは初対面・・・」
「間違ってなんかない!絶対間違う事なんてしないっ!!」
前言撤回。
静かではなくうるさ、賑やかだった。
ユイさんはだって!だって!と声を上げる。
「だってユウキ君は、ぼくの運命の人だもん!」
「お前、何言ってんの?」
僕はなかなか状況が理解出来ない中、
もう一度 つっこんでしまった。
「あの時、ぼくを助けてくれた事 一瞬たりとも忘れたことないよ」
「僕は助けた記憶も体育祭前に会った記憶も全くもってないんだけど!?」
大体、僕は人に助けてもらうポジションだし。
「他人の空似じゃないんですか?」
ユイさんはスっとソファーから立ち上がると、
そのままどこかへ行ってしまった。
・・・え?
これ、逃げるなら今ってこと?
話に置いてけぼりの僕は呆然とする。
(こんなことしてる場合じゃないけど、とりあえず落ち着こう。)
僕は出してもらったアイスココアで喉を潤す。
キンキンに冷えたココアの冷たさがパンク寸前でヒートした脳を静めてくれる。
コップをテーブルに戻したところで、
ユイさんは黒い上着を片手に戻ってきた。
「証拠ならあるよ。これ、ユウキ君のだよね。
あの時から借りたままの状態にしてるから」
ユイさんから上着を受け取って、広げる。
(黒の革ジャン・・・?)
僕は受け取ると表裏を見る。
すると、内ポケットのところに筆記体で【Y/M】のイニシャルと【Fortuna】刺繍が入っていた。
「これ・・・」
『フォルトゥーナ。運命とか幸運って意味の神様の名前から取ったんだよ。これを着て、幸せになって欲しいなって思って』
確か鷹雅兄さんが設立当初(と言っても1年ぐらい前だけど)にそんな事を言っていた記憶がある。
その時にOPEN記念で数量限定で作ったジャケットのサンプルを特別に僕のサイズに作り直してくれたのを貰ったけど・・・。
「なんでこれをユイさんが?」
「だから、ぼくを助けてくれた時に貰ったんだよ。
預かったっていう方が正しいかもだけど。
何で自分の物は覚えてて、した事は覚えてないの?」
不思議そうな顔をするユイさんに僕は困った顔をする。
そんな事言われても・・・。
「・・・ああ、そっかぁ。ユウキ君はぼく以外のたくさんの人も助けてあげてたんだね?それだったら、大勢の中の1人なんて、覚えてなくても仕方ないよね。」
ユイさんは悲しそうな顔をして、また隣に腰を下ろした。
「ぼくはずっと、ユウキ君のこと 探してたし会えた時はすごく嬉しかったのにな・・・」
「ユイさん。・・・ごめんなさい」
僕は、そっと立ち上がる。
「僕、やっぱりあなたとは体育祭が初対面です。
会った記憶も誰かを助けた覚えも全くないんです。
このジャケットは確かに僕のものです。
でも・・・ユイさんのこと、全く知らないです」
僕はごめんなさい、と頭を下げる。
そして部屋から出ようとして、
ぐにゃりと視界が歪んだ。
「っ!?」
僕は膝をついて倒れるのを防ぐ。
(な、何!?)
強烈な睡魔に襲われた様な錯覚に襲われ、グルグルと視界が定まらない。
身体も鉛の如くずっしりと重く、言う事を全くきかないので立ち上がれない。
僕は気分が悪くなり口元に手を当てる。
「・・・ふふ、良かった。丁度いいタイミングで効いてくれて」
静かに喜ぶ声が頭上から聞こえる。
「いきなりクルから気分が少し悪くなっちゃうかもだけど、一時的に身体がダルくなるだけだから。」
「・・・ユイ、さ・・・・・・」
「ココア、飲んでくれてありがとう」
にっこりと可愛らしい笑顔を浮かべる彼の目は
全く笑っていなかった。
警告音が脳内に鳴り響く。
「大丈夫、ユウキ君は何もしないでいいよ。
全部ぼくに任せて・・・?」
ユイさんは僕の頬を両手で包む。
「・・・だれ・・・・・・か・・・」
ココアに盛られた何かのせいで身体が動かせない。
「もう、2度とぼくのこと忘れないように刻んであげるね」
ユイさんは僕の顔を上に向けると、首元に顔を埋めた。
そして、首元に歯を突き立てた。
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