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氷の貴公子様
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この学校には変なあだ名の人がたくさんいる。
例えば、ユイさんに付けられた【姫】や【女王】。
(男だけど)女の子のような可愛らしい容姿に、
(男だけど)女の子のような小悪魔的要素があり、
(男だけど)時には有無を言わさない怖さというか強さを発揮する。
綾人さんに付けられた【化け物】や【怪人】。
スポーツにおける的確な判断とスピード力。
そしてそれを可能にする技術力に、素人の僕にも目に見えてわかる底無しの体力。
普段のおちゃらけた雰囲気からは想像がつかないけど、試合後も動きっぱなしだったにも関わらずピンピンしている姿を見て僕も化け物かと思った。
そして、夏目さん。
サラッと流れるようなクセのない闇の様な黒髪に
切れ長な目元にいつもは涼しげな瞳。
スッとした形のいい鼻筋とキリッとした眉には
育ちの良さが表れている。
しかし、その整った顔に感情が出る事が滅多になく 近寄りがたい鉱石の様な冷たさを放っていた。
「私の可愛い後輩に何をしているのですか、ユイ。」
そんな彼を誰かが「クールを通り越して【フリーズドライ】」または【氷の貴公子】と呼んでいたのを、今 ふと思い出した。
「ユイ、もう一度言います。何をしているのですか」
氷の貴公子は冷ややかな目で僕達を見下ろす。
文字通り空気がグッと冷えた気がする。
「何って、言わないとわからないの?」
「今すぐその汚い手を放しなさい。穢らわしい」
「ふーん、でも 合意の上だと言ったら?」
夏目さんは、息をひとつ吐く。
「優樹さん」
夏目さんはしゃがんで、僕にハッキリと言った。
「本当ですか?」
薬がだいぶ効いているのか口も動かのもしんどく感じる。
「・・・・・・がぃ、助けて」
「だそうですよ、ユイ。」
夏目さんはそういうとユイさんから僕を引き剥がし、抱き上げた。
「それでは優樹さんと帰らせて頂きますね」
「は!?何言ってんの!?」
ユイさんは声を上げる。
「まだ終わってないんだけど!?」
「そうですか。終わる前で何より。
何で彼が無防備にも二人っきりになったのかは存じ上げませんが、続きは後日 私も同席致しますので」
「お前の感想なんてどーでもいいし!
ユウキ君だけ置いて帰れっ!」
「お断り致します」
「そう言ってボクが引き下がると思って・・・」
「逆にお聞きしますが、貴方如きが私に逆らえると思いですか?」
夏目さんは腕に力を込める。
淡々と言っているが、言葉に怒りがこもっているのがわかる。
一瞬、ユイさんが怯んだ気がした。
「もう一度、その低脳でも分かるように言いましょうか?」
「・・・ユウキ君を置いてって」
ユイさんはそれでもハッキリと抵抗した。
「ただいまー・・・って、あれ?浜ちゃん?みしろ君の事知ってたんだね」
ピリピリした空気の中、のほほんとした口調が耳に届く。
「げっ、翡翠・・・!」
ユイさんがすごく嫌そうな顔をした。
「げっ、って何かな?みしろ君、大丈夫?具合悪そうだけど」
「・・・こんなにぐったりしているのを見て大丈夫と本当に思っているのですか?」
「そうやってハス君はいっつも意地悪言うよね。一応聞いただけだよ」
茶山先輩はこちらにゆっくりくると、ユイさんの正面に立つ。
「浜ちゃん、優樹に何したの?」
嫌そうな顔のまま、浜ちゃんって言うなとユイさんはぷいっとそっぽを向く。
・・・浜ちゃん?
「苗字が『由比ヶ浜』だから、そこから『浜ちゃん』だよ」
不思議そうなというか、変な顔をしたのか、
僕の心を読み取ったのか、茶山先輩が答えてくれた。
茶山先輩のあだ名の付け方が独特で未だによく分からない。
あと苗字、由比ヶ浜だったんだ。
「ちなみに名前は『武士』って書いて『タケシ』ね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
タケシ!?
え、本名、由比ヶ浜 武士!?
この顔で!?ギャップがすごいんだけど!?
「翡翠!武士って言うなって何回も言ってるだろ!」
「浜ちゃん、先輩に向かって呼び捨ては良くないよ」
「今 お前の事はどうでもいいし!」
「・・・ユイさん」
夏目さんはユイさんに視線を向ける。
「そこまで引かないのであればお好きな方を選ばせてあげます。
1つ目、優樹さんと金輪際関わらない。もしも関わる場合は事務的なやり取りのみ。」
「はぁ!?なんでアンタに決められなきゃいけないわけ!?」
「2つ目、優樹さんと関わっても私は何も干渉しません。」
「そんなの2つ目に・・・」
「その代わり、貴方を学校から追放します」
「「はあっ!!?」」
僕とユイさんが声を上げる。
ま、待て待て待て!?
今 追放って言った!?
「意味わからないんだけど!」
「退学させるとオブラートに申し上げたのですが、理解出来なかったのですか?」
「そこじゃないし!大体退学なんてさせれるわけ・・・」
「それも嫌ですか。仕方ありませんね。」
「当たり前じゃん!馬鹿じゃないの!?」
「由比ヶ浜さん」
夏目さんは口端を少し上げる。
「小学6年生の妹さんは元気ですか?」
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明けましておめでとうございます!
今年も優樹君やカフェ メビウスを宜しくお願い致します!
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