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バイトのルール
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「優樹、2人っきりだね」
店の奥の奥にあったオーナー専用室に通された僕は、テーブルを挟んで鷹雅兄さんと向かい合う。
鷹雅兄さんは長い脚を優雅に組みながら目の前に置かれたコーヒーに口をつける。
やることなす事が残念だが、それを差し引けば身内という立場抜きで見ても芸能人顔負けのイケメンなんだよなぁ。
なんで僕にはその遺伝子が少しでも受け継がれなかったんだろう。世の中理不尽である。
僕は熱い紅茶に息を吹きかけて冷ましながらチビチビと飲む。
「優樹、さっき店内を見て少しはわかったかもだけど、ここは腐女子と言われるお客さんの要望や妄想を叶えるカフェだ。さっき店内でイケメン同士が戯れてるのも接客の内の一つだ。」
「なるほど。僕にもああいうことをしろと」
「そうだね。すごくイヤだけど。」
じゃあなんでバイトに誘ったの。
「で、それはどこまでするの」
「どこまでとは?」
「単刀直入にいうとキスとかするの?」
「ゲホッ!!」
気管に入ったのが苦しかったのだろう。
鷹雅兄さんは涙目で口元を押さえて僕を睨んだ。
「お前、ゲホゲホッ、よくもまあそんな純粋そうな顔で・・・」
「鷹雅兄さんってうぶなんだね・・・」
「うるさい」
僕はハンカチを渡す。
鷹雅兄さんは乱暴に口元を拭う。
「そうだな、お客様の要望でしてほしいと言ってきたらだな。でも本当にするんじゃなくてしたフリとか、口の端ギリギリとかだから」
一応ここの社員は普通の人ばっかだから。多分。
と鷹雅兄さんは僕のハンカチをスーツの内ポケットにしまいながら答える。
ハンカチ返せよ。
「とりあえずここのルールを伝える。
1、基本お客様の要望に忠実に応えること。ただし未成年者も中にはいるから過激なものは拒否すること。
2、過激や無理な要望を受けた時はちゃんとお客様に伝えること。でも応えれるよう最大限努力をすること。無理な時は先輩に相談すること。
3、あくまでも店員と客。プライベートな事はあまり突っ込んだり言いふらすな。また、連絡先の交換も当店は禁止。
以上だ。」
鷹雅兄さんは前屈みになって顔を近づける。
「どう?出来そう?無理ならまだ止められるけど」
「それぐらいなら、出来ると思う」
そうか。と鷹雅兄さんは微笑んで僕の頭を優しくなでた。
「じゃあ、これ。シフト表。ウチは基本週2日以上だから。シフト決定後のやむを得ない変更は俺に連絡して・・・ああ、それと名前は本人の自由だけどなるべくニックネームとか下の名前で。その名前で接客もしていくから」
「わかった」
僕は名前の欄に【優樹】と書いてシフト表の時間を決めていく。
全ての記入事項を書き終えて鷹雅兄さんに渡す。
「明日からでいいのか?大丈夫か?」
「大丈夫。少しでも稼ぎたいし。まぁ、鷹雅兄さんの力になれるならなりたいし」
鷹雅兄さんは嬉しそうに顔を綻ばせる。
ほんと、残念な趣味がなかったら最高な従兄弟なんだけどなぁ・・・。
「優樹、よろしくな。明日、他の社員を紹介するから、今日は家まで送るよ」
「えっ、いいよ別に。僕一人で帰れるよ」
「もう6時だ。遅いしすぐ暗くなるから送るよ」
「鷹雅兄さん、過保護すぎるよ」
僕は鷹雅兄さんの好意を内心嬉しく思いながら、結局口論で勝てず送ってもらったのだった。
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