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冷と温
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一時間程前まで月が綺麗に見える
夜空が見えたのだが、
ポツポツと雨が降って、
段々と雨が激しく降り始めた為
近くの小さな屋根がある場所に避難した
「あーあ。折角、休みだってのに。
俺の一張羅が台無しじゃあねぇか」
雨から避難すると、
着流しはずぶ濡れで水分を吸って重く
身体は冷えるし
下駄を履いていた為
足は雨でべちゃべちゃだ
「こんなんなら、傘でも持ってくんだったな」
空を厚く覆った雲を見つめ、
雨で少しばかり湿った髪をボリボリ掻きながらどうしたもんかと途方に暮れる
やむまで雨宿りするかなと何時晴れると知れない雨雲を見ながらため息をつく
しかし、雨の中走って帰るのも気がしれるしと二つの選択肢を天秤にかけていると俺の前に一つの影が差した
「銀さん、こんなところで何してるんですか?」
「ゴリラ女!?」
「あら、銀さん開口最初の台詞がそれですか?」
拳をつくり、ひきつった笑いで
グーパンを顔面にくらい、
ボキッと鈍い乾いたおとが鼓膜に響いたと思ったら痛みが後から響き、
数秒間悶える
「ってぇ~っ!!」
「さっさと帰ってお風呂にでも、入ったらどうですか?」
「帰ろうにも、此方は帰れないんだよ」
「それじゃあ、この傘でも使ってください、お古ですけど」
ゴリラ女が手渡してきた傘を
手に取る、確かに少し古びちゃいるが
赤い普通のものだ
女はさっさと振り返りすたすたと
歩いていってしまった
「今度、返しに来てくださいね
それで、この前の御代はチャラにしてあげます」
という言葉を残して
俺も女の言葉をきき、少しの間ぽかーんとしたが、よっこいせと腰を上げて
傘をさし女とは反対方向に歩きだす
女はふと振り返ると赤い傘の後ろ姿を眺めまた振り向き歩きだす
「私たちには、もっと返さなきゃいけないものがあるんですからね」
雨と一緒にその言の葉もこぼれ落ちた
屯所につくと、玄関先には
かごの中にバスタオルが置かれていた
沢山の隊士達が見回りから帰ってきてる為だろう
俺は、かごからバスタオルを取りだし
傘に入っていたが濡れた身体や顔を
ふき、着替えを持ってから大浴場に向かった
「意外とこの時間はすいてんだな」
ざわざわと騒がしいとイメージしていたが、静かだなと意外な印象をうける
大浴場のガラス扉の取っ手を引くと、
中にはひとっこ一人いなかった
それに、軽く首を傾けながらも
銭湯特有のあのプラスチックの椅子?を鏡の前に置き、シャワーの蛇口を捻ると
温かいお湯が溢れ、髪に身体中に少し熱いお湯が注がれる
頭、身体と上から下へと順に洗っていき、漸く風呂に浸かる
冷えた身体が徐々に暖まっていく
小さなミニタオルを長方形に折り畳み頭にのせる親父スタイルを決め、
ふぅ~と息をつき、一人風呂を満喫しているとがやがやとした複数の話し声が聞こえてきた
心臓がドキッとした、静かな場所に
いきなり、騒がしい声が聞こえてきたとなれば当然だが
俺を特によく思っていないあの連中だとするならばリラックスできるこの場で
は、余りいい気分ではない
先程入ったばかりのこの湯船を出ようか出ないか迷っているとがらがらと乱雑にガラス扉が開かれ
俺をみて驚いた顔をしているやつと
目があった
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