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キスまで45センチ ⑩
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(大丈夫だった…?)
教室に戻ると、兄さんは心配そうに俺を見上げる。
「うん、大丈夫。何でもなかったよ」
ぽんぽんと頭に手を置くと、幾分安心した様子で、兄さんはほっと息をついた。
普段絡むことのない芸能科の人が、普通科の校舎に来るだけでもひとつの事件なのに、特定の「一般人」を連れていったために、教室は少し落ち着きがなくなっていた。
「何もされなかった?」
日和にそんなことを聞かれ、ふと首をかしげる。
「どういうこと?」
甘利は確かに暴力を振るっては来たが、見た目や普段の話し方からそんな雰囲気は見て取れない。
モデルとして仕事を一緒にした時も、プライドと信念を持った芸能人、と言った感じでしかなかった。
「芸能界だとどんな扱いなのか知らないけどさ…」
日和はちらちらと俺を物珍しげに見ているクラスメイトへ目を向けてから、声を落として、
「中学の頃から、モテる人にかなり酷いことしてたみたいだから」
と独り言のように呟いた。
「…酷いこと?」
「そう。裏から手を回して、いじめの対象に仕立てあげたり、カツアゲしたりとか…いわゆるいじめっ子って感じだった」
まるで見てきたようにそんなことを言うので、
「同じ中学だったの?」
と尋ねると、こくりと頷いた。
「まぁ、別に特に関わりがあったわけじゃないんだけどね。ただ、そういうのが噂程度ですまないくらい露呈してたから」
「そっか…」
芸能界ではよくある話。
業界によっては下剤を仕込んだり刃物を送ったりなんて話も聞くほどで、強かに生きるためには必要なのかもしれないけど。
…俺も、少し気をつけた方がいいのかな。
そんなことを思いながら、兄さんに目を向けると、心配そうに俺のズボンをつかんでいた。
「大丈夫だよ。ちょっと気を付けるようにする」
そう言ってなだめるように兄さんの肩をぽんぽんと軽く叩くと、小さく頷いて、ぎゅうと俺のシャツの裾を握った。
「気に食わない…気に食わない!なんだあいつ!!」
「落ち着けよ」
周りの声も聞かず、甘利はステンレス製のロッカーを蹴り飛ばした。
大きな音が響いて、その中央に凹みができる。
周りを囲む5、6人の男は、皆戦隊かというほどカラフルな髪をしている。
いわゆる「不良」だった。
「都宮灯夜…絶対に潰してやる…」
ぎりっと葉を食いしばり、甘利はまたロッカーを蹴り飛ばした。
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