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キスまで45センチ ⑤
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もぞもぞと兄さんが俺の布団に潜り込んでくる。
「ん…何、兄さん…?」
(灯夜と、ねんねするの…)
ぎゅうとだきつかれ、すりすりと頭を擦り付けられる。
「兄さん…」
片手にすっぽり収まってしまう頭を俺の胸板に押し付けて抱きしめた。
「今日は、長い一日だったね…」
(うん…)
「日和くん、悪い子じゃなさそうだったね」
(うん…)
「明日、もっと話してみようか」
(うん…)
「…兄さん、眠い?」
(眠い…)
口を半開きのまま俺にぐりぐりと頭を擦り付け寝ぐずりしだす兄さんを撫でる。
ちょんと口先だけのキスをすると、もそもそと俺の頭を抱いて寝息を立て始めた。
「兄さん、ご飯できたよ?食べないの?」
ベッドで天使のようにスヤスヤと眠る兄さんの寝顔をそのまま見ていたいと思いながらも揺り起こすと、兄さんは小さく身じろいだ。
「兄さん、遅刻しちゃうよ?」
(それは、やだ…)
「じゃあ、起きよ?」
よいしょっとしがみつく兄さんを抱き起こすと、俺の腕を右手でつかんで離さないまま左手で目をこすっている。
「兄さん…」
「と、や…」
俺が急かしたわけでもないのに、ましてやこんな朝から兄さんが声を出すなんて…
「ん、、?どうしたの?」
「おはようの、ちゅー…」
「…兄さん…」
肩を抱き上げながら、そっと顔を近づける。
「…ちゅ…」
「…ん…」
兄さんがいつでも顔を背けられるよう、頭に手は添えない。
舌もいれたりしない、触れ合うだけのキス。
「とーや…」
ちゅっちゅっと頬にキスをされる。
優しくて、可愛らしいキス。
「…兄さん、ほら、学校だよ」
…ずっとこのまま抱きしめていたい。
可愛い兄さんを、眺めていたい…
…と、そんな場合じゃなかった。
「兄さん、遅刻遅刻」
ぽんぽんと背中を叩くと、イヤイヤながらに兄さんが起きた。
もそもそとおにぎりを口にいれる兄さんを尻目に、弁当と水筒を準備する。
「兄さん、学校の用意はした?」
こくこくと頷くのを確認してから、お茶を差し出した。
両手で湯のみを持ち、んくんくと飲み下す姿は可愛らしいことこの上ない。
「兄さん、それ飲んだら学校行くからね」
こく、と頷いて、兄さんはとろんと目を垂らした。
共働きゆえ、誰もいない家に鍵を掛け、通学路につく。
勿論隣で兄さんが俺の腕を握っている。
「兄さん、今日俺、昼から撮影入っちゃってるから学校早退するけど…、兄さんはどうする?」
(僕も、一緒に帰る…)
「いいの?授業遅れたりとか…」
(僕、授業聞いてないもん…)
「…それは褒められることじゃないと思うけど…」
眉を下げて言うと、兄さんはちらと俺を見上げたあと、ぎゅうと手を握りしめた。
(…いいんだもん)
「…そうだね、兄さんがいいならいいんじゃいかな。じゃあ、今日は○×スタジオで、…えぇと、甘利隆治くん?…聞いたこと無いなぁ…」
比島さんからのメールに目を通し直すけれど、やっぱり知らない人だ。
「同い年みたいなんだけど…」
(行って、仲良くなれればいいね!)
「そう…そうだね。仲良くなれたらいいな」
兄さんの言葉に、俺は少し、撮影が楽しみになった。
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