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三話
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食堂の角を陣取り、俺たちは向かい合って座っていた。目の前にはラーメンをふうふうして冷ましてる若槻くん。俺の前にはカツ丼。
「猫舌なの?」
「そうなんですよ、緑茶なら熱々で飲めるんですけどねー。」
「あー、いるよねそういう人。俺の友達にも関西在住の人で猫舌なんだけどなんだけど、たこ焼きだけは熱々が最高やー!って言ってたよ。」
脳裏には声のでかい友人の姿が思い浮かぶ。
何故かたこ焼きは熱々で食べれてしまう猫舌野郎の姿が。
「あはっ、そんな人もいるんだ、あ、ですね。」
口角を上げて若槻くんは笑った………ん!?笑った!!初笑顔ゲットだぜ!なんて馬鹿なこと考えながら俺の口角も上がる。
「うん。変わってるよねー、若槻くんもだけど。緑茶だけは熱々ってどんな原理なの。」
「俺にはわかんないですよ。俺の体の三大謎のうちの一つですね。」
相変わらず目線は合わないけど、どこか変わった気がする。少し力が抜けたというか。
…………なんか、嬉しいな。
********************
今日からは本物の学校で撮影だ。制服に腕を通し撮影場所へ移動する。
「あ、若槻くん、おはようございます!!」
「牧野さん、おはようございます。」
ミディアムヘアーで目がパッチリのこの女の子は牧野早希さん。俺よりも5つも年下だ。
制服にも違和感が全くない。すごいなー。
「若槻くんに牧野ちゃんおはよー!」
「「おはようございま(ー)す。」」
春瀬くんも制服姿でこちらに歩いてくる。
俺より歳上のはずなのに俺より全く違和感がない。なんでだ。
「…………あんたのことが好きになったよ、佳代ちゃん。」
佳代の隣に佇む俺に一暼くれるように目を向ける、真っ直ぐとその綺麗で不思議に輝いて見えるその瞳を。そしてくっと口角を上げた。その一瞬確かに俺は飲み込まれた。
佳代もその輝きに一時飲み込まれたように見えた。佳代に向けたその色合いに。
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「はいカット!」
俺、春瀬都はふっと意識を浮かび上がらせた。そして先程までのシーンを回想する。
俺演じる皆川透(みなかわ とおる)とその幼馴染かつ恋情を抱き出しているヒロイン青木佳代(あおき かよ)。その二人の前に北熊悠(きたぐま ゆう)フラリと現れいきなり告白するというシーンだ。
若槻くんは演技になるとまるで人が変わる。いやそれは役者としてはそうしなくてはならないんだけど。あの笑みの違いにドキリとした。
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