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優先される理由 06歩
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「きえた、かった…っ」
役立たずの僕なんか居なくなった方がいいんだ。
普段からそう思ってはいたけど、店長とのことがあって更に思うようになった。
辛いのもあるけど、そんな僕に楢崎さんの温もりをくれる優しさに、涙が止まらない。
「よしよし」
楢崎さんはずっと撫でてくれていたし、僕の手を振り払うこともなかった。
「はー…」
「ん。泣き止んだか」
早く離さないと、汚いと言われてしまう。ただでさえ、ずっと握っているから手が触れているし、涙で濡れているから。
そうは思っているけど泣きすぎて頭がクラクラするせいで、楢崎さんの掴んだ手を離すことができない。
だから返事をすることなく、そのままの体制で深呼吸をしていた。
「そのまま、また眠っていいぞ」
返事もしない僕に、楢崎さんは優しくそう言ってくれる。
でも、僕は「嫌だ」という気持ちを込めて、楢崎さんの手に軽く爪を立てた。
「はは。嫌なのな」
楢崎さんは、何故かそれだけで理解した。
そして怒らないで笑っている。僕なんかに爪を立てられたのに。
変な人だ。
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