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こんな僕でもいいですか 05歩
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侑李さんに背中をさすられながら呼吸を整えようとする。
「はぁ…はぁ…」
「柚月はさ今話したいのか?」
「は、うん…はぁ…」
「そうか」
それで会話は途切れ、部屋に響くのは僕の呼吸音だけ。
結局熱々なスープが程よく冷えた頃に漸く話せるようになった。
僕はそのスープに口を付けて、渇いた喉を潤す。
「…お、いしい」
前に侑李さんが作ってくれたスープと同じ味だ。それに具も小さく切ってある。
侑李さんはいつでも優しい。
「さんきゅ。でも温め直した方がいいだろ?」
背中をさすってくれていた侑李さんがスープの入った器を持っていこうとする。僕はその腕を掴んだ。
「んーん…その前にさっきの話の続きをしたいから」
もう今話してしまいたい。
「分かった。じゃあ、ソファで話そうか」
「うん…」
二人で側にあるソファに座り、侑李さんをチラチラ見ながら口を開いた。
「…簡潔に言うとね、その…侑李さん以外の人に犯されました」
バクバクと心臓がうるさい。
今更ではあるけど後には戻れないから、そんなに煩くなっても意味がないのに。
あぁ…本当に怖い。今の僕にとって侑李さんに嫌われることが一番怖いのかもしれない。
「……それは合意か?」
「そ、うです」
合意なのかを聞かれて正直に答えるとするなら、それは合意だ。
何をされるか分かっていて自分で付いていったのだから。
「…理由はなんだ?俺では不満だったのか?」
「違う…!」
「それなら理由は何だ?」
そう言う侑李さんの顔が凄く怖く見える。眉間に皺が寄っているし、瞳は冷たく僕を写している。
怖い。だけど言わないと…っ。
「…僕は大学に入るまでいじめられてた。汚いって暴力されたり、無視されたり、“いじめ”って言われているものは殆ど体験していたんじゃないかな。その一環であの人達の性処理の相手もさせられてたの。彼女が出来たこともないのに童貞でも処女でもないのはそのせいだよ。その時から僕の身体は汚かったよ。綺麗な時なんて一度もなかった。そしてそれは大学進学で地元を離れて終わったの。誰にも行き先伝えてなかったからね」
「………」
「でもあの日、侑李さんとデパートに行ったとき、またあの人と再会したの。そして付いていかないと侑李さんにその過去をバラすって言われたの。馬鹿だよね。逃げればよかったのに付いていっちゃった。どうしても過去のことは自分から話したかったから。また“汚れる”ってことなのにね。まあ、それであの人たちに付いていって犯されて今に至ります」
これが侑李さんに話していなかった僕の過去。
侑李さんを見ないで殆ど息継ぎをせず早口で言ったからか、運動した時のように息が切れて呼吸が荒くなった。
侑李さんは何と言うんだろう。
何も言われないこの沈黙が辛くて、涙が出てくる。
「ごめんなさい。汚くてごめんなさい。本当に…っ」
出てくる涙を手で拭いながら兎に角謝っていると、不意にその手を取られ、下に降ろされた。
「柚月」
「…グスッ、は、い…」
「よく話してくれたな。おいで?」
軽蔑ではない優しい言葉に驚いて前を向くと侑李さんはいつの間にか僕の目の前にしゃがんでいた。そして優しく微笑んで手を広げてくれていた。
僕は迷いなくそこに飛び込んだ。
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