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なんでお前が…?
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『その時の傷がこれ。
この傷を隠す為にいつも手首に包帯巻いてるんだ。』
そう言って手首のリストカット跡を見せてくれた。
そこには痛々しい古傷がいくつも残っていた。影宮くんはそのまま話続ける
『その過去があったから俺は人を信用する事が怖くなった。人を避けるようになった。
例え信用した奴がいたとしても、いつかは裏切って俺の前から消えるんじゃないかって。
捨てられるんじゃないかって。
裏切られる事が何よりも怖い。
だから大切なモノを作りたくない。
…人はいつか裏切る。だから人と距離を縮めるのが怖い。
でも動物は言葉を話せなから傷つかないし。
誰よりも信用できる。だから俺はミケや雪を信用してる。
信じてやれる。』
影宮くんは今までの全てを俺に話してくれた。
その時、やっと解ったんだ。
学校の桜の木の下で影宮くんが子猫に言った言葉。
《お前は俺と一緒だな》
……あの時の言葉は、そーゆー意味だったのか。
『はい、これで俺の今までの話は終わり。これで満足かよ柳田』
話し終わると影宮くんはゆっくり顔を俺の方へ向ける。
『満足したならもう帰っ……、』
話の途中に影宮くんの声が途切れた。
『…は…?何でお前、泣いてんの…………?』
『……………………………えっ……?』
俺は自分の頬手を持っていき、触ってみると頬には涙が
流れていた。
『あ、あれっ……?何でだろ……、ははっ…。
ごめ…、ちょっと待って。す、すぐ止めるから…………』
笑って誤魔化すが、いくら拭っても拭っても
流れ続けて止まらない涙。
指をつたって床の上に落ちていく涙。
((…どうしよう……涙、、止まらない……何で俺っ……。))
『……お、おい、柳田……?』
影宮くんが、なかなか泣き止まない俺を見て焦っている。
俺は思っていた事を影宮くんの前で唇を噛み締めながら
吐き出す。
『……か、影宮くっ゛…!ご…ごめんっ……。
俺…………影宮くんの事…今まで何も知らなかった…。
影宮くんが、どんな気持ちで学校に来ているのかとか……毎日どーやって過ごしているのかとかっ………。
かっ、影宮くんの過去とかっ………!ほんと…ごめんっ………』
ボロボロと涙が流れ落ちる。
さっきよりも止まらない。大粒の涙が次々と溢れ出る。
止めようとすれば、するほど涙が止まらない。手首で涙を拭う。
そんな状態の俺の隣に影宮くんがそっと座り、俺の頭の上に手を置いた。
影宮くんは俺から目を床にそらしてそっと呟く。
『…別にそんな風に思って欲しいわけで話した訳じゃねぇよ。
俺の為に泣いてくれてありがとな、俺はもう大丈夫だから…。だから泣き止めよ』
((影宮くんのそんな言葉を聞いたらもっと涙出てきそう…もう……。なかなか泣き止まない俺を見て、迷惑がってるんだろうなぁ…。))
そう思っていた時、肩に影宮くんの手が触れる。
そのまま影宮くんは俺をそっと抱きしめた。
影宮くんの大きな身体に俺のひとまわり小さい身体がスッポリ入ってしまう。
『……………………え、影宮くっ……?』
俺は驚きの声をあげる。
影宮くんの顔を直接見ることは出来なかったが影宮くんの耳が赤くなっている事に気づいた。
『お、お前が泣き止むまで……このままでいてやる……』
俺はその言葉に甘える事にし、影宮くんの背中に手をまわしてギュッとシャツを掴む。
俺は久しぶりに声を上げて泣いた。
影宮くんの腕の中で泣いた。
暖かい腕。落ち着く腕……。
影宮くんが虐待を受けていた事。
過去に何があったのか。
今まで俺を避ける様にしていた意味。
人を信用しなくなった理由。
幼い頃から辛い思いを背負って今まで生きてきた事。
((1人ぼっちで辛かったよな…、寂しかったよな…。
もっと早く気づいてあげられてたら………。もっと早く出会っていれば……ごめんな))
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