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熱の記憶
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『あのさ………俺もお前に聞きたい事、あんだけど』
不意に影宮くんが口を開く。
『俺に聞きたい事……?う、うん。いいよ?』
影宮くんは深呼吸をして覚悟を決めた様な顔をする。
((そ、そんな緊張する話なのかな……))
『…お前、前熱出て早退した事あったろ?
その時の事なんだけどよ。俺が飲み物持ってこようとしてお前のベッドから離れようとした時、意識朦朧なお前が《1人は寂しい、行かないで》って俺の袖掴んでそう言ったんだよ。
あれ、どーゆー意味?』
((寂しい…………………行かないで…………?))
『………………………え゛ぇっ!?!?!
俺ちょっ、待っ、え?!そんな事言ってた?!』
驚きと恥ずかしさでガバッと立ち上がる。
うんうん言ってた、と頷く影宮くん。
『は、ははー……そーなんだ……。』
引きつる笑顔。たぶん、今の俺の顔はキモイ。
続けて話す。
『それ言ったのは無意識なんだけど、たぶん俺の育った環境のせいかも。
俺ん家ってさ、大家族なんだよね。
8人家族。クロさんも合わせると8人と1匹ってわけ。
俺はガキの頃、すぐ風邪引いたり熱出たりしてたんだよね。
でも母さんも父さんはいつも仕事で家にいなかったし兄貴や弟も学校とか保育園とかで家には俺1人しかいなかったんだよ。
母さんと父さんは
《看病してあげられなくてごめんね》っていつも謝ってくれた。
俺も本当は寂しかったけど仕事の邪魔する訳にはいかないと思ったからさ。いいんだよいいんだよ、って平気なフリしてた。熱の時に、家に1人って結構寂しいもんなんだよねー。
今まで、その事を隠して来たから自然と言っちゃってたのかも。
なんか…ごめんな……?』
俺は顔の前でごめん、と両手を合わせる。
『……そーゆー事か。………………じゃあさ。
今度熱出た時は俺を頼れよ。
熱だけじゃなくて何かあった時に。いつでも駆け付けてやるから……』
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