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追う者
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『え…、まずくない?追いかけなくていいの、京佑?』
俺は窓の外を見ながら呟く。外には雨が降っていた。
『なっ…!なんで俺がわざわざ、あいつを追いかけなあきまへんの?俺は悪う事してまへん。しかもあいつ、頬叩きおった…』
『で……でもさ…でも、、』
頑として自分は悪くないと言い張る京佑に俺は何も言えなくたってしまった。
『今のはどう考えてもお前が悪いだろ』
((かっ……影宮くんっ…!))
『はっ…?!なんで俺がっ、』
『駆が言ってたろ?《真剣にやった》って。あいつなりに頑張ったんじゃねぇの?なのに、あんな言われ方されれば誰だって嫌になるわ。』
『そーだよ、今回は京佑が謝った方がいい!』
((柚樹ぃ…………………泣 ))
『これは俺の空想だが、あいつはお前の言葉よりもお前に《頑張りを認めてもらえなかった》って事に傷ついて出て行ったんじゃないか?』
壁にもたれ掛かり、腕を組みながら影宮くんが淡々と話す影宮くんに京佑は舌打ちをした。
『…っなんでそんな事っ……!あんたに何がわかるんどすか?!』
『…わかる。俺もガキん時、母さんに対してそんな風に思ってたから。
どれだけいい子でいようとしても、いい事をしようとしても、母さんに褒めてもらおうと頑張っても何も変わらなかった。
俺は母さんに《暴力を振るう為の人形》としか思われていなかったから。』
シンと静まり返る部屋の中。
部屋の中には、ただ先程から降り続けている雨の音と雨が地面に落ちる音と時計の針が動く音のみが反響していた。
『…ッ……。すまへんどした……』
京佑が影宮くんから目をそらし、下を向く。
『いや。別に謝ってもらう為に言ったわけじゃないから。とにかく俺が言いたいのは《一言でいいから謝ってやれって事》だ。』
数秒間、京佑は下を向いていたが覚悟を決めたように顔を上げ、影宮くんを見つめると頷いて部屋を出て行った。
『おっ、俺達もっ………』
京佑の後に続いて駆を探そうと出て行こうとする柚樹を陸人が引き止めた。
『………これはあいつらの問題だから…そっとしておいてやった方がいいんじゃないか…?』
『確かに陸人の言う通りかもしれない…。けど、友達をほっとくなんて俺は出来ねぇんだよ、』
『俺も柚樹と同じ意見だよ。』
『あぁ。』
『お前ら……………。
……わかった。俺も協力する、じゃあ4人でバラバラに散らばって探すぞ。見つかったら連絡頼んだ』
陸人が携帯をポケットから出して指で画面を指しながら言った。
『わかった!』 『了解ッス!』 『おう』
その頃京佑は折り畳み傘をポケットに突っ込み傘を刺さずに、ただ走っていた。地面を蹴る度に地面に溜まっている水がズボンの裾を濡らした。
『駆!駆!どこや!いたら返事しぃや!』
((……………駆っっ…!どこにおんねんっ………!
駆が行きそうな場所………っ。ゲーセン…カラオケ…ショッピングモール…))
足を止め、いくつか行きそうな場所を考えてみたがなかなか、これとした場所が出てこない。
((よく考えろ京佑………、
あいつの好きな事。よくいる場所。よく行ってた場所。………………………あっ…、))
その時、1箇所だけ思い浮かんだ。
『もしかしたらっ……………!』
思い切り足を踏み出し、方向を変えて京佑は再び走り出した。
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