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第一罪 「金ト緑」Ⅲ
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きらびやかな街灯。
美しい女、美しい男。
誘う仄かな甘い香り。
愛を囁き合う声。
例え偽りでも、この街にはその全てがある。
俺は、この街が好きだ。
ーーーーーー
「おい、お前。
そこの、金髪のお前だ」
道の真ん中で立ち止まり、声を発する。
俺が人を呼び止めたのは、思えばこれが初めてだったかもしれない。
道の端に見える煌めく金色の髪。
色々な色の頭がひしめくこの街で、作った色ではない、美しい金色に、通りすがった人々も目を奪われていた。
この位置では後頭部しか見えない。
その顔が見たい、そう、単純に興味があった。
そう… それだけだった。
ゆっくりと振り替える青年。
全てが俺の目にはスローモーションに見えた。
「…………何か用か」
あからさまに迷惑そうな、面倒そうな表情と声音。
だが、予想以上に、美しかった。
日本人では有り得ない程白い肌。
全てを見透かされそうなライトグリーンの瞳。
鋭いラインを描く顎。
周りを寄せ付けない相貌なのに、どこか漂う色気。
体は黒っぽいマントで覆われているが、鍛えられた細身の体なのは明らかだ。
花魁なら、例え間違いでもいいから、一回は抱かれたいと、そう願ってもおかしくないほどにそれは…
目を、奪う。
「………ないのか?
ならば行く」
「いいや、用ならあるぜ」
さっさと歩き出そうとする金色を、また引き留める。
「名を教えろ」
「………意味がない」
「俺が知りたいだけだ。
教えてくれ」
「………お前に名乗る名はない」
心底嫌そうに吐き捨て、身を翻し歩き出す青年。
「ふっ………ははっ」
俺は、笑っていた。
この街じゃ、誰もが俺に話しかけられたらすかさず色目や何やら使い、漬け込もうとする。
あんなに素っ気ない態度を取られたのは、いつぶりだろうか。
面白い。
金髪に緑の瞳…。
視界から消えていく金色を、俺は見えなくなるまで見つめていた。
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