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聞けない答え
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それから話がはずんでお互いの学校のあるあるだとか、他愛ない会話をしていたら。なかなかタツとの関係を聞き出せずにいた。
けれどいつまでたってもこうしている訳にはいかない。
俺は思い切って、話を遮るように口を開いた。
「あのっ……あの」
だけどそれは尻すぼみして終わる。
どうしてか聞けなかった。
もしきいて、タツと付き合ってると言われてしまったら。
それを想像するだけで、酷く寂しくなった。
心臓が痛い。痛いなんてもんじゃない。
ぐるぐる俺が頭の中で思考を巡らせていると、澄香ちゃんが言った。
「あれ、タツじゃない?」
「えっ」
ガラス張りになっている店の外に、タツの姿があった。
目が合って心臓が高鳴る。タツを見つけただけで、こんなにも嬉しい。
タツは俺をみて何か言う。
でも、ガラス張りのせいで外のタツの声は聞こえない。
「え?」
俺はじっとタツを見つめて、その口の動きを追った。
『こい』
来い。そう聞こえた、実際には聞こえてないけれど、脳内で、タツの低くて優しい声で、再生された。
「俺、いってくる!」
「えっ?」
「これで払っといて!」
「ええっ……これじゃ多いよ!」
財布から適当にお札を何枚かテーブルの上に置いて、俺は走って店を出た。
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