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急降下からの急上昇
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明らか落ちてる俺に気づいてタツははぁ、と溜息をつく。
「今こうして会ってんだろ」
「そうだけど、こんなんじゃ足りない」
会ってるって言っても電車が駅に着くまでの間しか猶予ないし、そんなの時間が少なすぎる。
もっとタツと話したい。もっと近づいて、面白い話して、一緒に笑ったりしたい。
俺はタツを他人だと思ったことはない。俺にとってタツは兄弟で、兄貴みたいな存在なんだ。
「マジで面倒くせぇ」
放たれた一言に心がずん、と更に重くなる。
心臓はすう、と冷えていくのに目尻のほうはジワリと熱くなっていく。
なにこれ、なに俺泣きそうになってんの。どんだけだよマジ。
ここで泣いたら確実タツに引かれる。
これ以上タツに嫌われたくない俺は必死でこみ上げてくる涙を堪えた。
「行きゃいいんだろ」
折れたような、呆れたような、でもやっぱり優しさの含まれた低くて暖かい声。
え、今なんて。
「え」
「あ?来て欲しいんじゃねぇのかよ」
「来て!超来て!めっちゃ来て!」
さっきの俺が嘘みたいにテンションは急上昇する。ていうかMAXだ。
タツが俺のために家に来てくれる。これ以上に嬉しいことってあるでしょうか。いいえないです。
「うっせぇ。声デケぇわ馬鹿」
べし、と頭を叩かれる。
でもそれすらも嬉しくてにこにこ笑ってたらタツはそんな俺をじっと見詰めてくる。
呆れた顔とか溜息とか、またそんな反応されるもんだと思っていたから不思議な感じで首を傾げる。
「ふぐっ」
そしたらぎゅう、と鼻を摘まれて変な声が出た。
タツはすぐに手を引っ込めてまた視線を電車の外の景色へ向けた。
「え、なに、なにさっきの」
「何となく」
なんだそれ。
なんかタツが可愛いんですけど。
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