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ワンライ、お題「浴衣で花火」(一カラ)
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ふと気付けば、一緒に歩いていたはずのブラザー達がいなくなっていた。
賑やかに騒ぐいつもの五人が見当たらない。立ち止まって探そうとしても、流れる人混みにぐいぐい背中を押されてしまう。
仕方なく流されながらも少しずつ横に進んで、よろけながら人混みから抜け出た。
ずり落ちそうになった肩を直し、緩んだ帯をあげてからさっきまで自分がいた人混みを眺める。
やっぱりブラザーは誰も見付からない。俺だけはぐれてしまったのだろうか?
どうするか。動き回らずにここで待っていようか。
その内ブラザー達が気付いて捜しに来てくれるかもしれないし……来ないかもしれない、が。
屋台ではボーイズがこぞってお面を被り合っている。あれがいい、こっちの方がいいとはしゃぎながら。
その隣の店ではガールズが的に向かって銃をうつ。……おぉ、ナイスショット。こてんと熊のぬいぐるみが体を倒した。
ふわりと芳ばしい香りがただよってきたのは焼き鳥屋からだった。どうして屋台の焼き鳥はスーパーなんかで売っているものより数倍美味しそうに見えるのだろうか。ぐぅ、とお腹がなった気がした。
今はそれよりブラザーを見付けなければ。視線をそらすと、その先には水風船が容器にプカプカ浮かんでいた。前にしゃがんだカップルが仲良く糸をたらし、目当ての風船をつり上げようとして……落としてしまった。でも、それでも二人は楽しそうな声をあげた。
なんだかその姿に、一人でいる自分を意識してしまう。せっかくお祭りなのになぁ。
待ってるだけじゃダメだ、自分から捜しに行こう。
そう決めて一歩進んだ瞬間、左肩をひかれた。
振り返ればそこには愛しのマイブラザーがいて、俺は息をゆっくり吐き出した。
「こっち」
もうはぐれてしまわないようになのか、前科のある俺の手を自然につかみ、紫の浴衣をひるがえして一松は先へ行く。
連れられてどんどん歩いていく内に、周りの人並みが減っていく。ぽつりぽつりとすれ違うだけだったのが、手を離された時には一人もいなくなっていた。
薄暗い階段を、一松はのぼっていく。後ろからついていきながら、背中ごしに疑問を投げた。
「一松、皆はどこなんだ?」
はぐれた俺を見付けて、他のブラザーの所に案内してくれてるのだとばかり思っていたのに。
辺りを確認してもブラザー達はいないし、それどころか人気すら全くない。
「皆って何の事」
「いや……道に迷いし俺を他のブラザー達に引き合わせてくれるんじゃなかったのか?」
「誰もそんなの言ってませんけど」
「それは……そうだが」
言ってないが、普通そう思うんじゃないだろうか。
「じゃあ、ここはどこなんだ?」
「花火がよく見えるとこ」
「そうなのか?」
「会場から離れてるから人気もないし、隠れスポットみたいなもん」
「そんな場所あったのか。連れてきてくれてありがとうな!」
皆とはぐれてしまったのはいただけないが、あのまま一人でいたら花火だってよく見れなかっただろう。
とりあえずお祭りに来たのは花火を見るためだったので、素直に楽しみになった。
一松が階段の一番上に座ったので、俺も並んで座ってみる。
「花火、そろそろか?」
「だと思う」
空を見上げた俺を見習うように、一松も顔をあげた。
それをチラリと横目で見る。
浴衣って、首回りかなり開くんだよな。普段着ているパーカーの時には見えない、首筋とか鎖骨とか、そういう所がよく見えて。
別におかしな事じゃないのに、見てはいけないようなものを見てしまったような変な気分になってしまった。また空を見上げてごまかす。
静かな夜空をただ見つめていたら、突然首に何かが触れた。あ、一松の指だとわかった時には指は浴衣の胸元をなぞり、合わせ目にひっかかる。
力を入れられれば、浴衣は少しずつはだけていき素肌が晒しされていく。
「一松……!?」
「人いないけど、あんまり騒ぐと危ないよ」
「何がっ……ん!」
一松が顔をよせてきて、そっと唇同士が触れ合う。
最初の触れ合いはそんな優しいものだったのに、何度か角度を変えて唇を合わせていたら、性急に口を開かれた。
口の中をぬるりと舐められると頭の中も一緒に舐められているみたいで、一気に視界が滲む。
胸元を直接撫でる手が下へ下へとさがっていくから、流石にそれ以上はヤバイと力の入らない手で応戦した。一松の腕をつかんで、引き留める。
ようやく顔を離した一松は正面から俺の目をのぞきこんで、おもむろに口を開いた。
「カラ松」
そんな風に、こんな時だけちゃんと名前を呼ぶのはずるい。それだけで俺は動けなくなってしまうのに。
かたまる俺に、一松が顔を近付けた。
耳に響く破裂音とともに、空に光の粒が踊ったのが視界の端に映った。
見れば、すごくすごく大きな火の花が夜空一面を彩っている。
「すごい……」
見いっていると、一松は体を離して浴衣を直してくれたようだった。
珍しくも引いてくれたのに内心驚いていたら、苦笑で返された。
「花火見たかったのにって文句言われそうだから」
「それは言うぞ。せっかくお前と……恋人と二人きりで花火が見れるのにもったいないだろ?」
さっきまでのように、今度は俺から手を繋ぐ。
空では一際綺麗な花火が音をたてて咲き乱れ、キラキラと零れるように落ちて消えていった。
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