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入学式 3
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どんなに待っても、身体に痛い衝撃が…来ない。
感じたのは誰かに身体を支えられたようで、しっかりと胸に抱きしめられていた。
ぎゅっと強くつぶっていた目をおそるおそるゆっくりと開くと、自分とは違うネクタイの色が目に入った。
「あ…」
(今年の1年生は赤色のネクタイで、確か2年生は青色のネクタイ、3年生は緑色だったはず…)
その年によって紫色だったり黄色だったりと色が違うらしい。
目の前のネクタイの色は青色、なので2年生の先輩だ。
「大丈夫?足とか捻ってない?」
優しく聞かれた。
とても心地よい声色にぼーっとしていたら、心配したように声をかけられた。
「どこか痛い?」
その言葉にハッと我に返った。
「い、いえ、なんともありませんっ」
抱きしめられていたままだったので、慌てて身を起こした。
咲の顔は下を向いたまま、恥ずかしくて相手の顔も見れない。
すると、窓から桜の花びらが風でヒラヒラと舞いながら廊下に入ってくる。
それに導かれるように視線が動く。
「わぁ…きれい」
助けてくれた人が、くすっと笑う。
咲はまた下を向いてしまった。
桜をみとれている場合じゃない。
「すみませんでした!!」
(助けてもらっといて違う事に目移りをするなんて!)
慌てて謝罪すると…
「怪我、してなくてよかった。この学校の周りは四季折々の植物があるから、季節でまた違う風景が見られるよ」
優しい声の持ち主はそう言うと、咲の身体を半回転させ、咲の教室を指差した。
「教室はあそこだよ。入学おめでとう!!」
「あ、ありがとうござい…」
後ろ向いてお礼を最後まで言う前に、助けてくれた恩人はもういなかった。
「…」
一体誰だったのか顔を見なかった。
さっきよりも廊下に新入生が少なくなっていたので、慌てて教室に入るしかなかった…。
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