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2日目 3
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ポットのお湯が沸く。
お湯だけをコップに入れて温める。
お湯を捨ててから、コーヒー豆をフィルターに入れ、ゆっくりとお湯を注いだ。
コーヒーを入れ終わる。
コップを持ってソファーに行く。
「…いい匂いだね」
愁が手掛けていた書類を終えてこっちに来る。
「コーヒー入れたので、どうぞ」
(『どうぞ』と言っても、コーヒーはここに置いてあったのだけど)
自分の言ったことが矛盾しているなと思った。
「じゃあ、いただきます」
愁は気にすることもなく、口をつけて飲んだ。
「美味しい!ありがとう。なかなか温かいのが飲めなくてね」
愁が喜んでくれた事に咲は嬉しくなった。
「昨日はごめん、話の途中で席を立ってしまって」
「いえ、気にしないで下さい」
愁が悪い訳でもない。
(生徒会長さんは、気を使ってくれている…)
みんなが口を揃えて言っていた『優しい人』なのだろう。
「えっと…それで昨日の続きの事なのですが…」
「2つ目の理由だね。物凄く唐突な事をいうのだけど実は、景色や人物が白黒に見えるんだ」
(白黒??)
咲は驚いてしまう。
「正確に言うと、家族はちゃんと色鮮やかに見えている。あと咲、君も」
「え?」
「家族以外で、はっきり見えたのは咲が初めてなんだ」
「僕…?」
愁は頷いた。
「生徒会役員は理事長、校長の次に新入生の名前と写真だけの書類が見られるようになっているんだ。そこで咲の写真だけが、とても色鮮やかに見えた」
(僕だけ…色鮮やかだなんて)
「物だと颯人、えっと副生徒会長の如月颯人の作った物はカラーに見えるんだけど」
「そういえば、如月先輩は姫の衣装を作れるって言ってましたよね」
「颯人はとても手先が器用だから、すごく良い物を作るよ。中学校から一緒なんだけど教室で編み物をしてて、その物が色が着いて見えて声をかけて、そこから親友になったんだ」
「!そうだったのですか」
「うん。その作品が綺麗だなと思ったら、颯人の顔も少しだけ色づいた」
いつも目を開けると、当たり前の様に映し出される風景や人の色が愁には見えていなくて。
そんな愁は、今までどうやって過ごしてきたのだろう。
(優しい人だから、誰にも言えないで過ごしていたのかも)
そう思っているとズキッと胸が痛む。
「病気でも何でもないみたいだし、言っても信憑性にかけていると思う。だけど…」
愁は咲を正面から見た。
ドキッと胸が高鳴る。
愁に見られただけで、ついさっきの胸の痛みが消えて、恥ずかしいような嬉しいような気分になってしまう。
(…僕はどうしちゃったのだろう)
そんな咲に愁は言った。
「鮮やかに見える君の存在は、家族よりも大切にしなきゃいけない」
咲は自分の頬が熱をもったのを感じた。
「俺の自分勝手だけで、咲を縛ることは出来ない。でも入学式の前に君に会って確信した」
真っ直ぐに見つめられて眼がそらせない。
「姫になって欲しいって思ったんだ」
咲はどうしていいのかわからなくなる。
ずっと胸がドキドキしていて、考えがまとまらない。
愁は落ち着いた声で咲を呼ぶ。
「…咲」
「は、い!」
変な声が出てしまった。
「…これは強制ではないからね。それに姫になるとすごく大変だから断ってくれていいから」
愁は改めてもう一度、強制ではないと言った。
(でも…)
「あのっ!」
自分でもびっくりする事を言い出した。
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