アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
6日目 6
-
連れて来たのは桜並木の道の、ちょうど真ん中ぐらいの所だった。
(僕が愁にしてあげられるのは、これしか無いよね)
愁と向かい合い、両手を繋ぐ。
これがきっと、咲だけが愁に与えてあげられる事だと信じた。
「桜の色、見えますか?」
咲に触られると、見える物が色づくと言われていたが不安になり、咲は愁に聞いた。
愁は辺りを見回した。
「うん、すごいね。廊下で見たときよりも近いから、より一層綺麗だ」
いつも見られない色で眩しいのか、目を細めながらゆっくりと眺めていた。
「桜はこんな色なんだね。同じピンク色じゃなくて濃い色や、淡い色があるのが見えるよ」
それでも、嬉しそうに眺めている愁を見て、咲はキューッと胸が締めつけられた。
愁の事が、いとおしく感じた。
愁を掴んでいる両手に力を入れると、愁は咲に目線を移した。
「…きです」
声が震える。
もしかしたら天が言った通り、愁は咲の事を諦めたのかもしれない。
本当はもう、手遅れかもしれない。
けど…
愁が自分を好きだと言ってくれた時に、言えなかった気持ちを愁に聞いてもらいたかった。
知って欲しい。
「僕は、愁が誰よりも一番、大好きです!!」
周りは桜が不規則に風に吹かれて、はらりっと落ちているが、こういう景色をこれからもずっと愁と見たい。
桜だけではなく、色々な木や花や生き物が芽吹く春。
太陽に反射されて、キラキラと輝く海の波を感じる夏。
次々と、赤や黄色の色を付けていく木々の葉を見る秋。
深々と降る雪には、良く見ると違う形の雪の結晶があるのを確認しながら歩く冬。
ひとつひとつを毎年、一緒に見てみたいと思った。
春夏秋冬、様々な素晴らしい景色にも咲だって見たことの無い知らない事だって、たくさんある。
これから一緒に、発見して行きたい。
「愁と、一緒にいたいです!」
そう言った瞬間、抱きしめられた。
庇ってもらった時の感じでもなく、助けてもらった時の感じでもなく、大事に包んでもらっている感覚だった。
「咲!」
更に、愁の腕に力がこもる。
「咲が大好きだよ」
咲は嬉しくて嬉しくて、目から涙が溢れ落ちた。
身体は密着したままで、顔だけ動かしてお互いを見た。
「俺も一番、咲が好きです。咲と出会えたことを感謝してるよ」
愁は咲を見て、嬉しそうに微笑んでいた。
愁は右手で咲の涙を拭いてやるが、次々溢れて止まらない。
こんなに嬉しい事なんて今までなかった。
「咲、これからずっと一緒にいてくれる?」
「はいっ!」
速攻で答えられる。
迷いなんてない。
一緒にいられる為なら、何だって出来る気になる。
(愁が側にいてくれるだけで、強くなれる気がする)
もちろん、天のように体術を扱える訳でもないし、強い訳でもない。
でも、2人なら何とかなると思えてしまう。
(恋をするって、すごい力が働くの…かな?)
「咲…」
愁が、咲の涙を拭きながら言った。
「咲、綺麗だ」
「っ!!」
その言葉に、咲は顔が真っ赤になった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 111