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エピローグ 5
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愁は咲に身体を向ける。
(そう言われると…恥ずかしいけど)
咲も愁に身体を向けた。
恥ずかしいけど、期待で胸がいっぱいになる。
『咲』
愁は声を出さずに、口だけが動く。
『はい』
咲も声を出さずに、口だけを動かした。
愁が、咲のベールに手を伸ばす。
ベールアップした咲の顔を、いとおしそうに見ていた。
その視線に、くすぐったい感じになったが咲は、にこやかに愁に笑いかけた。
報道部が、このチャンスを逃さないようにしきりにシャッターを押し続けているのに、音が気にならなくなった。
周りの人達の声も、すーっと聞こえなくなる。
近くにいる茉莉も見えなくなって、まるで愁と2人きりで祭壇にいる感覚になった。
その後は、動きがスローモーションに見えた。
愁の両手が、ゆっくりと咲の両手を触った。
それを合図に、愁の顔が咲の顔に近づいて来る。
咲は、ゆっくりと瞼を閉じた。
そして…
誓いのキスをした。
周りが吐息を漏らす。
息を飲む声も聞こえる。
唇が触れている時間は短かったが、すごく長く感じられた。
すっと、唇が離れた。
お互いが微笑み合った。
茉莉が頃合いを見て、静かに言った。
「それでは、2人とも祭壇を背に向けて下さい」
今度は、祭壇で写真を撮ることになった。
あっちこっちから、フラッシュが光り眩しい。
「…咲、ちょっとごめん」
愁が急に謝った。
「愁?…わっ!!」
愁が横に少し前屈みになり、咲の背中と膝に手を添えたかと思ったら身体が宙を舞った。
いわゆる、お姫さま抱っこだった。
周りで歓声が沸き起こった。
「し、愁っ!」
咲は驚いて、身体を下ろしてもらおうと動かす。
「これ、してみたかったんだ」
愁が咲に向かって言った。
「へ?」
「咲を抱き上げたかった」
ニコッと笑顔を向けられてしまった。
「ぼ、僕、重いです!」
しどろもどろになりながら咲が訴えるが、愁は気にしていなかった。
「重くない。むしろ軽すぎるくらいだよ?」
「目線は、こちらに~!」
(あぁぁ…)
身体を下ろして、もらえそうにない。
咲は諦めて、愁の首に手を添えた。
顔が更に近づく。
フラッシュの中で、愁が咲にだけ聞こえる小さな声で言う。
「咲、すごく綺麗だよ。可愛いし」
「っ!」
「咲の姿を撮ってもらう為に、颯人に頼んでスマホを渡しといて良かった」
心臓が持たないくらい、ドキドキとうるさい。
「報道部の人達にも、たくさん咲の姿を現像してもらわないとね」
「愁も…カッコ良すぎるから、僕もいっぱい欲しいよ」
そう言うと咲は、愁の方を見て頬にキスをした。
(~っ、恥ずかしいけどっ)
『おおっ!!』とまた、歓声が上がる。
愁ははじめ驚いていたが、咲の方を見て愁からも咲の頬にキスをした。
『おおおっ!!』とまた、歓声が上がる。
「ラブラブついでに、その状態で再度キスをして下さい!」
報道部から注文がくる。
「咲、してもいい?」
愁は咲に聞いた。
「はい…!」
お互いが微笑み合い、首を少し傾けてキスをした。
幸せで胸がいっぱいになったのだった。
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