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Act.14 褌
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オミさんから借りたのか奪い取ったのか定かではありませんが、下着と浴衣をもって浴室に逃げ込みました。
内側から鍵をかければ、あの二人も入ってこられないはずです。
「まーさーきー、ここ開けて。浴衣ひとりで着られるの?」
ドアの外から香月さんの声がします。
「ユズ、これ越中だろ?やっぱ、六尺じゃないと。俺、通り向こうの和装屋に行って買ってくるからさ待っててよ」
越中?六尺?オミさんが香月さんと仲良く話している時は碌な事にならないのは学習済みです。何の話でしょうか。
あ、「好奇心は猫をも殺す」でした。余計なことに興味を持っては危ないですね。
「大丈夫です。紐で止めればなんとかなります...…あれえっと、右が下?で腰紐で止めれば……香月さん!胸元が思いっきり開いてます、何か変です」
「だから言ったのに。あけて、ここ。きちんと着せるから」
「……変なことしませんよね..?」
「変な事なんてしないよ。将生、浴衣なんで独りで着たことないでしょう。正しく着せてあげるだけ」
仕方なく素直にドアを開けると呆れ顔の香月さんがいた。
「ほら、汗かいちゃってるし、おいで」
そう言われて叱られた子犬のような気持ちになってしまいました。
手を引かれて外にでると、丁度オミさんが帰ってきました。
「ユズ、これ」
ぽんと投げてよこした和柄の紙袋を受け取ると、香月さんが満面の笑みで振り返りました。
「一旦、この浴衣脱がせさせてね」
もう下着も着替えたし、大丈夫です。香月さんは浴衣を脱がせると、ぽんとソファの上に投げました。
あれ?なぜ浴衣はあんな遠くへ?
「将生、はい、手をだして」
そう言われて、広げられた香月さんの手の上に両手を乗せました。シュルっと浴衣の紐が……紐!?
「やっぱり正しく着るなら、ここはフンドシだよね」
ええっ?ど、どう言う事ですか?いきなりリビングで下着姿で手を縛られていますけど?
「将生が大人しく着替えさせてくれたらこんな事しなくても良いのに」
笑顔の香月さんに、いきなり下着を剥ぎ取られ、するすると長い布が下半身に巻きつけられていきます。こんな……こんな事まで、手際が良い必要ってあるのでしょうか?
あれ?褌って……前にひらひらとした暖簾みたいなのが下がってるあれじゃないんですね。ん?何を僕は感心してるのでしょう。
ああ、これって……お祭りで見た事あります。さっきのタンガとが言う下着と変わらないやつですね。
……後ろはまるで紐だけのようです。
「やっぱりこれ、何を着ても似合うな、将生。で、兄貴カメラは?」
え?カメラ……カメラって……。
どうして、この二人が共闘する時って被害者はいつも僕なのでしょうか。
【衣類というより衣装 おしまい】
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