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Act.15 スーツ
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えっ...今朝はどうしたのでしょうか?
ドアがいきなり開いたと思ったら、知らない人が突然入ってきました。
「あれ?先客か?」
先客?あ、この高校生君ですね。客じゃないですが。
ところで…...あなたはどちら様ですか?明らかにこのアパート似つかわしくない高そうなスーツを着たビジネスマンですね。
「へえ、本当に余り目立たない容姿なんだ、噂は間違ってなかったな」
確かに目立ちませんよ。それが、どうしましたか?
あなたとは違いますが、そんな事を言われる筋合いはございません。
そもそも誰なんですか。
「僕が先ですから、出てってくださいよ」
うーん、ややこしくなってきました。何をこの高校生は言ってるんでしょう。先…...って何の話ですか。
「それを選ぶのは彼だろう」
そう言うとそのビジネスマンは、僕を見て微笑みました。
「ねえ、このガキと俺どっちがいい?」
選択肢の意味がわかりません、何を選ぶんでしょう。薄々気がついてはいますが、認めたくありません。あのDVDをお持ちということは、つまりそちら側が性対象なのですよね。
「すみません、どちらも無しです。お帰りください」
「ちょっと待って!出会いサイトの板見てちゃんと来たんだぞ」
「そうですよ。僕だって、一睡もせずに始発で来たんですから!」
同時に二人で大きな声を出されても…...言われている事がまだ見えてこないんですが。
「出会い系サイト?何のことですか」
「つまり、君は俺たちが好みではないから、断ろうというんだね。そんな詭弁は…...」
詭弁も何もありません、だって身に覚えのないことで詰められているのですから。
「ですから、出会いサイトなんて知りません!お二人共お帰りください」
「ちょっと待ってください。僕の携帯、これ見てくださいよ」
そこに書かれていたのは…....
”お相手探しています、寂しいです。どなたか温めてください。いつでも大歓迎!〇〇区〇〇町xxxです。僕はアパートで独りぼっちです。二階の203号にいます。あなたの素敵な姿を期待しています。一番お似合いの格好でぜひいらしてください”
とんでもない恥ずかしいメッセージ付きで、僕の住所と僕のDVDの写真がいくつか貼られていました。ぼ、僕じゃないです。そもそもこんな言葉遣いしません。
だれがこんな書き込みをしたんのでしょう……僕の住所を知っていて、出演作品を知っている人なんて限られています。
まさか、香月さんが一緒に暮らすために?いやいや、それはあり得ません。
頭を抱えて悩んでいたら、ぐいっとそのビジネスマンに引き寄せられました。
「このメッセージ見たから、俺は一番のお気に入りのスーツで来たんだよ。掲示板は大騒ぎになってたよ、本物かどうかって。俺は思い切って来て良かったと思っているよ」
「ですから、僕じゃないです」
「でも、本当にここに居るじゃないか。これを見た他のやつが来る前にさっさと取り掛からない?別に俺はそこの高校生とで3人でも構わないけど、これ以上増えるのはちょっとな」
「僕じゃないです、これ書き込んだの。絶対に!」
「何を今更言っているんですか。僕も学校には一応行きたいんですから早めにお願いしたいです。ドキドキして眠れなくなったんですから、責任とってくださいね」
責任も何も、これを書いたのは僕じゃないことそれだけは間違いありません。
ずいっと、近寄ってくる二人に貞操の危機を覚えた時に、またインターフォンがなりました。
「チッ、誰かまた来たのか」
ビジネスマンさん、口悪いですよ。って…...誰か来たって?どう言うことですか。
「鍵、かけてなかったか?失敗したな」
そのドアの向こうに立っていたのは…....。
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