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Act.16 日本酒
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簡単に香月さんにイかされてしまいました。でも何だか、何だか物足りません。
「そろそろ次に行こうか?」
「え……次ですか……」
「何、今更分からないふり?あんま将生に飲ませると、この先できそうにないしね」
ああ、香月さんの目は本当に嬉しそうに輝いています。それってそう言う意味ですよね。
そして、期待している自分自身ににももう驚きません。
握りしめていたグラスはひょいと香月さんに取り上げられてしまった。
「香月さん、僕……喉がからからで……」
水を少し飲もうと、目の前にあった水の入っていたグラスを持ち一気に飲み干しました。
「ばっ、馬鹿っ、それ俺の日本酒!」
そう香月さんが叫んだ時には全て胃の中に収まっていました。
「ん……ふーっ」
熱い液体が体内を勢いよく駆け回って、一瞬くらっとしました。そして大きく息を吐くと、パタンと床に倒れてしまったようです。
「……?」
あれ?何ですかこれ……キモチイイ……。
「香月さん?」
真っ暗な中で目が覚めました。手を伸ばすと目の前に軽く寝息を立てる綺麗な顔がありました。その顔を見た瞬間にゾクゾクする気持ちよさが、こぽこぽと湧いてきて、ぱんと弾けてしまいました。
思わずその顔を両手で包んで、口づけました。でも、足りない。これじゃ足りないのです。自分の気持ちが熱い溶岩のように、どろどろと溶けながら流れ出したような気持ちになりました。
「香月さん、柚人さん……起きて、起きてください」
「ん?将生……大丈夫?」
起きて見つめられた途端に、泣きたい気持ちになりました。ぽろぽろと涙がこぼれてきて止まりません。
「こ…づ……き…さん、すき…好きです」
涙が止まらなくなり、しゃくり上げながら訴えました。なんで分かってくれないのでしょう。
「ど、どうしたの?将生?」
「うっ、だ…から…ひっ……すきって……うっ…く」
何か変です。本当にどうしたんでしょう僕は。
好きでたまらなっくて、なぜか悲しくて仕方ありません。
「だから……ぐっ……言ってるでしょお……どして…わか……らないの……」
泣きながら必死に訴えてしまいました。どんどん感情が高ぶって制御不可能になりました。好きで仕方なくて、どうしても伝えたいのに、香月さんはただ俺を見つめているだけです。
香月さんに触れて欲しくて、一生懸命に縋り付いてしまいました。
「将生、落ち着いて。なんだか嬉しいけれど、こんな大サービス。酔ってる?かなり酔ってるな、これ……」
言われている意味がよくわかりません。とにかくもう待てません、香月さんのシャツに手をかけると一気に引っ張り下ろしました。
「将生」
囁かれた自分の名前に恍惚となりました。
「将生、大丈夫。お前は一生俺のそばにいるんだよ。誰にも渡さないから安心して」
何度も頷きながら、泣きじゃりました。涙が止まりませんでした、そして意識の方が先にぷつりと切れました。幸せで満たされて、遠のく意識の中で愛しい人に、一生懸命に手を伸ばしました。
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