アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Act.17 よろしくお願いします
-
え、デビュー作と同じ、無理やりのパターンで最後はおわるのでしょうか。情けないスタートは、情けないエンディングをむかえるしかないのですか。
そう思った瞬間に香月さんの手がふと止まりました。
じっと僕の顔を見つめて、悲しそうな顔をしています。その時、ぱたっと一粒の涙が僕の顔の上に落ちてきました。
「えっ?」
いつも自信に満ちていて常に我が道をゆく、そんな香月さんに有り得ない状況です。驚いて一瞬体が硬直しました。
「将生は……どうしたいの」
真剣な目で語りかけてきます。僕が悪いのでしょうか。そうなですか?違いますよね、最初は……。
香月さんに流されてここまで。
「いつも俺は将生に振り回されてばっかりだ」
あれ?そう思ってたのは僕だけじゃないという事でしょうか。
僕の意思を全く無視しているようで、いつも結局香月さんに助けられてたのは確かです。
ジェフの撮影の時も助けてくれましたし、カメラマンの臣人さんからも。
もしも最初の相手が香月さんじゃなくて……そう考えるだけでもぞっとします。
「どうしたいのかわかりません。でも多分、好きですよ」
ああ、とうとう認めちゃいました。もし、あの時あのバンに出会わなければ、今も背中を丸めて歩いていました。きっと楽しい思いもすることなく。
こんな胸のときめきも覚えることなく……あれ?……こうやって見上げると心臓が小躍りしてしまいます。仕方ないよですね。だって本当にドキドキしてしまうのですから、理屈じゃありません。
もうどうするって、降参するしかないでしょう。
「……香月さん、これからも……よろしくお願いします」
「将生!?本当、俺がんばっちゃうよ」
「あっ、頑張るのは無しでお願いします。これ以上頑張られると僕の身がもちません」
これまでにないオーラを発しながら、見下ろしている香月さんが楽しそうに声を立てて笑った。さっきの涙は少ししょっぱかったけれど、今は甘い香りが漂っています。
ん?甘い香りですか……あれ?いつの間にか薔薇の花びらが周囲に巻かれていました。
ああ、何言っちゃったのでしょう僕は、撮影中でしたよね!
「よーし、このまま撮るから」
僕の告白は今回のDVDの中に収録されるってことですね。と言うより、あの涙がまさかの演出ってことはないでしょうね。そんな演技にほだされて、開けてはいけない扉を開けてしまったのでしょうか。
今さら聞けない、聞きたくないです。そうだ、僕の告白も演技ってことには……ならないですよね。あの笑顔、本気ですよね。
わかっています、二十年以上ハズレくじしかくれなかった、神様が気まぐれで置いた一番の当たりくじ、それがきっと香月さんなのでしょう。
神父さん、ごめんなさい。こんなところで……お待たせして。でも香月さんのブレーキは今絶対にかかりません。そのくらいのことは知っています。
もうしばらく、さっきの続きはお待ちください。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
115 / 120