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レナードは、仕事用で使っている家の前に立っていた。
ここでは普段、仕事で屋敷に帰れない時に休息として使ったり、一人で考えたい時に使ったりしている場所だ。なかなかに居心地が良く、ここに仕えているルイスとも気が合うから、なんだかんだ気に入っている。
そして、今は悟がここで療養中だ。悟が目を覚まし安堵してから束の間。こうも早く喧嘩になってしまうとは。
悟を失いたくなくて、悟を独占したくて、言うはずではないことを軽く口にしてしまう。どうやったら、悟は振り向いてくれるのか。そればかりを気にして、周りが見えなくなっていた。
悟と距離を置くべきなのか。ふと、その考えが思い浮かぶ。一旦、リセットして……だが、今は薬が使えない状態で発情期が来てしまう。なら、どうすればいい。
ぐるぐると考えを巡らせている時、ルイスから何回か電話が入ってきた。
──ルイスからの電話、よろしいのですか? サトル様のことではないのですか?
──放っておけ。今、顔を合わすとまた言い合いになるからな。お互いに頭を冷やしたほうがいいんだ。
──左様ですか。では、屋敷のほうへお戻りですか?
──そうだな。
そうして、結局ここに来てしまった。
やはり悟のこととなると、隅には置いておけないのである。まったく仕方のない人ですね、と呆れるダリウスが頭に浮かんだ。きっとそう言われるに違いないだろう。
レナードは、鍵を開けて家の中へ入った。
しかし、入ってすぐに違和感を覚える。ルイスはもう自宅に帰ったのか、見る限りの灯りはすべて消えていた。
そして、この甘ったるい匂いは悟のフェロモンだ。それもかなり濃いもの。咲良から不安定だと聞いていたが、こんなに酷いものだとは思いもしなかった。それに数日前に悟は発情している。目覚めた時のあの一時だけで、レナードのフェロモンにあてられたということだろうか。もしそうだとしたら、厄介だとレナードは眉間に皺を寄せる。
最後に一番の違和感は悟以外の匂いだった。
なぜ、ダリウスの匂いがする──?
間違いなくダリウスの匂いだ。ここには関係ないはず。むしろ、ダリウスは悟のことを好いていないようだから、余計に疑問に思う。
その匂いを辿っていくと、どうやらキッチンのほうかららしい。キッチンまでの道は特に変わった形跡はなく、いつもの通りだった。ダリウスがいる気配もないようだが……。
「ダリウス、ここに来ていたのか?」
そう言いながら、レナードは念のためキッチンを覗いた。
すると、割れたグラスの先に、ぐったりと横たわっている人物がいて。それを見た瞬間、レナードの血の気がぐっと勢いよく引いていった。
「っ、サトル……なのか?」
なぜなら、愛してやまない人が衣服をひん剥かれて裸で倒れていたからだ。
再び見るような光景。悟が自殺未遂を起こした時と同じような。
レナードは、目の前の現実に眩暈を起こしそうだった。
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