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カツン、カツン──。
レナードの指先がドアアームレストをノックして、車は動いているというのに、やけにその音が響く。
「知らない、とは言わせない。サトルのことだ。どうやらお遊びを楽しんだそうじゃないか」
威圧的なαの瞳。怒りというより余裕がある雰囲気でレナードはダリウスを見下していた。
それは同じαのダリウスでも圧倒されて、じわりとダリウスの額に汗が滲む。
「……さすがはレナード様。情報が早いですね」
「そんなことはどうでもいい。サトルは自分から誘ったと言っている」
「サトル様が……?」
ダリウスの眉間に皺が寄った。
もちろん、それはレナードの言っていることと、事実とが違うからだ。レナードは正反対のことを言っている。
それはそうと、ダリウスにはこの悟の言動に理解が出来なかった。なぜ、自分に不利になるようなことをするのか。なにか企みがあるのかと思えど、まったく先の行動が読めない。
なら、本当に庇ったというのだろうか。なんのために……?
微かな動揺の色が揺らめくダリウスに、レナードはふん、と鼻で笑った。
「ああ。それが本当だとしてもだ。番のいるサトルの誘いに乗るとはどういうことだ? 今、アイツのフェロモンは番の俺にしか効かない。ここまで言えば、わかるよな?」
怪しく光るレナードの瞳に、ゴクリとダリウスは生唾を飲み込む。
恐ろしい人。今までに仕事で長年付き添ってきたが、ここまでのものは初めてだった。
「誘われたとは言え、サトルを抱いたのはお前の意志だ。一度、Ωを抱いてみたかったか? そうならば、お前も落ちぶれたものだな……」
「っ、申し訳ございません。罰はなんなりと受けるつもりでいます……」
元々、そのつもりだったのだから。そのつもりで、憎い悟を犯したのだから。
しかし、それはダリウスが予想だにしない形となって返ってくる。
「罰ならサトルが受けた」
「え……」
一瞬、なにを言われたのかわからなかった。
「だから、すでにサトルが受けたと言っている。誘ったサトルが悪いのだろう? なら、ダリウス。お前にはお咎めなしだ」
「そんな……私は……!」
咄嗟にダリウスは身を乗り出した。だが、レナードの強い視線にあっさりと負けてしまう。
「くどい! 今回はサトルに免じて見逃してやると言っているんだ。けどな、次に同じことをしてみろ。ただじゃおかない……!」
悟に免じて……? なんなんだ、それは──!
ダリウスが作った拳は、あまりにも握る力が強すぎてぷるぷると震えていた。
悟に助けられた。あの忌々しいΩに、αである自分が。
その事実は、ダリウスにとって屈辱的なことであり、史上最悪の罰であった。
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