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ちゅ、とリップ音が鳴って、ようやくレナードの唇が離れた。
どうしよう、これだけで腰が砕けそう。悟は唇に指先を当てて頬を染める。
「また可愛いことを……」
低く唸るような声が聞こえると、再びレナードに引き寄せられて顔を胸に埋めた。
ふんわり香る甘いフェロモンに、ドクドクと感じるレナードの鼓動。悟と同じで少し早めに動いている。きっとレナードも悟の鼓動を感じているだろう。そう思うと、余計に血液が顔に集中して。
悟はぎゅっと目を瞑って、レナードが着ているカーディガンを握った。
「レナード様……」
切ない声が出る。しかし、その瞬間、勢い良く身体を離された。
「……行こうか」
「はい……」
なんとも言えない空気に、悟とレナードは静まり返る。さっきまで楽しく話していたのが嘘のようだ。
もういい大人なのに初恋のように初々しい気持ち。悟が心臓のドキドキを治めようと胸に手をあてていると、視界にレナードの手が差し出されるのが入って。
「次は噴水広場へ行こう」
「はい」
その手の上に自らの手を重ねれば、自然と指が絡んで恋人繋ぎになった。
噴水広場やモニュメント、庭園もいくつもあって広い公園を歩いていると、あっという間に夕方だ。
カフェでアフタヌーンティーを味わいながら、悟は夕食のことを考えていた。正装ではないので、レストランで食事ということはなさそうだけど。
「レナード様、夕食はなにか考えていますか?」
「サトルはなにが食べたい? 体調とか心配だったから予約はしてないんだ。だが、すぐ通すように話はつけれる」
そうだ、レナードという人はそういう人だった。名前でだいたい通るだろうし、正装をしていないと理由をつければ、じゃあ買いに行こうで軽く済んでしまうだろう。
なんて恐ろしい、と思いながら悟は口を開く。
「あの……良ければ自宅で食べませんか?」
「そうか、たくさん歩いたし疲れたよな。じゃあ、デリでなにか買って帰るか」
「あ、えっと……疲れたとかではなくて。最近、デイジーさんに料理を習ってて、良ければ今日のお礼に振る舞えたらと思って……ああ、買い物もしないとですし、たいしたものは作れないんですけど!」
食事はルイスやデイジーに任せたり、レナードが頼んで持ってきたりと、いつも悪いなと思っていた。だから、思い切ってデイジーに教えてくださいと頼んだのがここ最近のこと。
今までレナードには言っていなかったが、レシピもある程度覚えてきたし、こういう機会にちょうどいいのではないかと感じた。誰かに手料理なんて、初めての試みではあるが。
「……俺は今日死ぬのか?」
「えっ、そんな変なものは作りませんよ!」
レナード様じゃあるまいし!
口を滑らせてしまいそうになり、慌てて口を噤む。しかし、勘違いをしていたのは悟のほうで、すぐにレナードに否定をされた。
「違う。それだけ幸せってことだ……」
「あ……」
再び変な空気が舞い戻る。
もしかしたら自分も死ぬのかもしれない。発作のように鼓動の高鳴りが鳴り止まないから。
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