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自宅でと決まれば、バスを使ってスーパーへと移動する。レナードが最初から高くて有名なスーパーの名前を出してくるから、それを丁重にお断りして安いスーパーへ向かった。
本当はせっかく料理をするので、なにが食べたいかと聞きたいところだったが、レパートリーが少ない上に自信もないのでメニューは任せてもらうことにした。その後で、悟が作るならなんでもいいと言われてしまったけれど。
そして、店内に入るやいなや、レナードはカートを押したいと言ってきて。滅多に……むしろ初めてだと瞳を輝かせていたから、子供ですかと、くすくす笑ってやる。
悟自身、一緒に買い物だなんて夫婦みたいだなと思っていたのに、市場の勉強になると、どうやら相手方はそれどころではないらしい。でも、そういうところは嫌いではない。悟も食材選びに集中する。
それから、スーパーで食料品を調達して会計が終わると、レナードは近くに車を呼んでいたようだ。車に乗ってしまえば、自宅まであっという間だった。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
いつものやりとりをすれば、レナードが振り向いて。そのままじっと見つめてくるので、悟は小首を傾げる。
「ほら、サトルも」
そう言われて、やっと気がつき、照れくさそうにレナードへ伝える。
「ただいま戻りました……」
「おかえり」
心温まる一言だった。なんだか帰る場所があると思った瞬間だ。
「頑張って作りますね」
「楽しみにしている」
と、食材を持ってキッチンへ向かったのはいいのだが。
「……あの、レナード様? 時間がかかりますので、テーブルのほうでくつろいでいても大丈夫ですよ?」
「料理は危険と隣り合わせだからな」
キッチンまでついてきたレナードは悟の隣にいる。非常にやりづらい。ああ、はっきり言ってしまおう。なにもしない人が隣に立たれると邪魔である。
屋敷にいる時もそうだったが、悟がなにかをしているとレナードはじっと見つめてくる。特に日本茶や紅茶をいれる時は、視線が気になって仕方がなかった。
今回も同じく、作業に集中出来なさそうだ。それに、給仕のように慣れていることならまだしも、調理は経験の浅いことだから困る。
「そんな危険なことはしませんから……」
「包丁に、コンロ……危ないだろう」
「それはレナード様の扱いが悪いだけです」
まずい。勢いに任せてバッサリと言い返してしまった。
慌てて悟は頭を素早く回転させて、別の言葉を考える。
「作る料理、出来上がるまで内緒にしておきたいんです……図書館で借りた本でも読んで待っててください」
「……む。そうか……」
晴れない表情をしているが、レナードは悟の言葉を受け止めたらしい。キッチンから離れていくレナードを見て、ホッとする悟だった。
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