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「逢見さん」
「ん?」
「もし、その時が来たら晴臣様によろしくお伝えください。後日きちんとした形で挨拶に伺いますと」
「ああ、わかった」
きっと晴臣の元へは、レナードと一緒に向かうことになるだろう。今はレナードが忙しいから難しそうだが、落ち着いた時に話しを切り出そうと悟は考えていた。
もし、晴臣にレナードが番だと言うことが出来た日には、レナードへ自分の想いを告げることが出来るのだろうか。迷いなくはっきりと、貴方のことが好きですと言える日が──。
悟は席を立ち上がると、窓の外を眺めた。つい先日まで秋の紅葉が綺麗だと思っていたのに、今はすっかり冬の景色で。
「晴臣様にΩである自分のことを好きになるんだよ、と言われました。それはまだ胸を張って言うことが出来ません。でも、今、とても楽しいんです。晴臣様の時とはまた違って……レナード様と番となれて幸せだと思っています。逢見さんには色々と迷惑をかけたから、伝えておきたくて」
窓をするりと撫でたあと、悟は咲良のほうへ振り返って微笑む。そうすると、咲良が悟の元へやってきた。なにかと思えば、いきなり抱き締められて、ぽんぽんと頭を叩かれる。
「晴臣の代わりだ……よく頑張った」
悟の瞳が見開かれる。そして、その瞳はじわりと潤んだ。
「頑張ったなんて……俺は一回死のうとした身ですよ?」
「けど、今、幸せって言っただろ。晴臣やレナード様のことにしろ、Ωのことにしろ、すべて受け止めて。昔から見てきたからな……例えるなら雛が飛び立ったような感覚だな」
「……なにそれ。その例え、言う必要ありましたか?」
そう言いつつも、悟は咲良の胸に顔を埋めた。あたたかい。最近は涙腺が弱くて困る。
褒められるほどに頑張ったわけではない。たくさん傷つけたし、迷惑をかけた。だが、咲良の言葉は悟に染み入って。震える背中に咲良の手がぽんと当たって、またその優しさに嗚咽が漏れた。
「薬は帰ってからまた調合するからすぐには難しいけど、発情期までには間に合わせるから。一応、レナード様には報告を上げておく」
「はい、よろしくお願いします」
それから、落ち着きを見せ始めたところで、咲良の「お友達の時間は良いのか?」の一言に悟はハッとする。かろうじて時間はまだ許せる範囲内だったが、表情の移り変わり具合に咲良には笑われてしまう結果となった。
見送りはいいからと言われたものの、そういうわけにはいかない。そしたら、咲良に再び笑われて、さすがに悟も頬を膨らませる。
「じゃあ、友達と楽しんでこいよ」
それも、帰っていく咲良はどこか嬉しそうで、どうでもよくなってしまったけれど。
悟は軽く準備を済ませて、ノアと約束しているカフェへ向かった。
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