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「出張……? いつもされている出張ですか?」
最初に聞いた時は身を構えていたもので、するすると力が抜けていくような感覚だった。
それも、レナードが着替えたあとに、テーブルを間にして対面で座って真剣な顔で話してきたからである。今の立場であったり、番のことであったり、もっと重要な話をされるのではないかと思っていたが、出張ならいつものこと。悟は少し安堵していた。
しかし、この安堵は今だけで、レナードの本題はここからであった。
「まあ、そうなんだが、今回のは長い期間を設けているんだ。海外支社へ期間をかけて転々と回ることになる。こっちのほうには当分の間戻れないかもしれない」
「当分の間とは、まだ期間はわかっていないのですか?」
「そうだな。今からスケジュール調整に入る。だが、数ヶ月単位では終わりそうになくてな」
「そうでしたか……」
次第に話が悟にとって受け入れ難いものになっていく。仕方ない。けれど、素直に頷けない自分がいた。
今もなかなか会えなくて寂しいと感じるまでになったのに、長期間化するなんて。レナードの話だと、半年、一年、もしかするとそれ以上になるかもしれないのだ。そして、ノアと恋だのなんだのと話して浮かれていたのは自分だけと、突きつけられたような気がした。
長期間の出張。レナードがなにを言いたいのか、もうわかっている。
「だから、そうなるとサトルの発情期が……」
やっぱり──。
悟は一呼吸置くと、グッと拳を握り締めて気持ちを切り替えた。
「レナード様、私のことは気にしないでください。毎回、申し上げております」
すると、レナードは溜め息をついて。
「そう言うと思った。軽々しく言うけどな、簡単なことではないだろう。まだ薬だって使えないじゃないか」
悟はこの時、レナードが今日の検査のことを知らないのだと気づいた。前は時間を割いてまで駆けつけてくれていたのに。
「その薬の件ですが、薬の弱いものであれば使えるようになったのです」
「いつわかったんだ。聞いていない」
「……今日の検査で、逢見さんが言っていました」
咲良だって報告すると言っていた。それはすでにレナードの元へ届いているはず。
「……ああ、そうだった。そういえば、サクラから報告が来てたな……すまない」
レナードが手で顔を覆っているのを見て、悟は眉を下げた。
求めてはいけない。わかっている。わかっているけれども、それは表面上のことだけで本当は悲しかった。
出張で発情期が問題になっているのも、検査を報告するのも、これではレナードの足手まといだ。時間の限られた中、今まで難なくこなしていたレナードが異常だったのかもしれない。悟はそう感じた。
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